◇狐、１７０ ページ20
、
そんな様子を、ポカン、と１人呆けてみていた勇一だったが、一瞬にして意識を取り戻す。
「な、何言ってんだべさ！！ 俺らは敵どうしで！」
「そうだね」
「ホントは斬り合わなくちゃいけねぇ立場でっ！！」
「うん」
「そんで、そんでっ･･･」
必死になれ合ってはいけない理由を探し出そうとする。
しかし、肝心の優一は軽く受け流すだけで、一向に腕を放してはくれなかった。
次第に鬼の言葉が尽きてくると、優一は視線を狐に戻す。
「狐、ええな？」
有無を言わせぬ雰囲気、と言うよりは、柔らかくそれでいて優しげな声が狐の耳を擽った。
何かを言わねばならないのに、言葉が見つからない。
狐が黙って居るのを良しと捉えた優一は、再度子鬼に視線を向けた。
「ほな、行きましょか？」
狐がまばたきを一つし終える頃には、剣城の頭領と、狐の主である鬼はその場から姿を消していた。
、
剣城家の屋敷にて。
誰よりも早く屋敷に着いていた京介はチラリと門の前で空を見上げる陽也を見た。
剣城の人間からの情報を得た彼らは、なんの言葉を交わすでも無く共闘に近い何かを誓うかのように視線のみを合わせた後、一気に剣城の屋敷まで帰ってきたのだ。
「･･･」
睨み付けるように空を見つめる陽也の眼力は、それだけで人様を殺してしまうのでは無いかと思わせる位に鬼気迫っていた。
理由は簡単だ。
術か何かで体を宙に浮かせた沖田の頭領と、２人の付き人のうち、片方に抱えられた海城の女頭領。
そして＿＿＿。
「三日月･･･っ」
同じように抱えられている、狐の姫君が視界に入った。
自分でも気が付かないうちに彼女から預かった西洋の剣をモチーフにしたお守りに手が伸びる。
＿＿俺が護ると、誓ったのに。
＿＿＿俺が、側を離れるな、と言ったのに。
自分で自分が情けない。
握った拳に力が入った。
握りすぎて、感覚が無くなってきた、その時だった。
「･･･手、」
「え？」
「力を、抜いた方が良いです。血が出てます」
それまで下を見下ろす沖田の頭領を睨み付けていた陽也が、驚くほどすんなりと声をかけてきた。
言われて初めて自分の手を開いて見る。
手のひらは、自分の爪が食い込んでいたのか、真っ赤な血が滲んでいた。
自分の鈍さに呆れる京介に、陽也は小さく呟いた。
「･･･そんな事をやっても、罰にはならねぇだよ」
あぁ、分かってるよ、そんな事。
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京夜(プロフ) - アルテナさん» ありがとうございます！！ コメント、とっても嬉しいです！！ これから更新スピード上げられるように頑張りますッ！ (2015年1月4日 22時) (
レス) id: c45efebd4a (このIDを非表示/違反報告)
アルテナ - とても面白いです！！！続きが楽しみです！更新頑張ってください！ (2015年1月4日 20時) (レス) id: ab1d996a39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：京夜 | 作成日時：2015年1月1日 12時
