◇狐、１６３ ページ13
、
狐に言われるがままに一歩を踏み出した時である。
「･･･ぅ」
先程までは放心状態だったために気が向かなかったが、今更になって振り返した様に傷の痛みが優一を襲ってきた。
お陰で金狐までのたった数メートルが酷く遠く感じられる。
それでも睨むようにこちらを見る狐の視線に耐えられずに優一はゆっくりと歩み寄って行った。
しかし、優一を呼んだ狐は存外気が短いらしい。
いつまでもゆったりと歩む優一に嫌気が指したのか、ついには行動に出てしまうくらいには気が短かった。
『やれ、遅いのう』
「え、！？」
溜め息を吐くかのように一言洩らした狐は、尾で優一を掴んで引き寄せた。
いきなりの事で驚く優一を他所に、金狐はそのまま優一を自分の腹を背もたれにして座らせる。
『ふむ･･･、お主も傷だらけよの。血のニオイがしよる』
「何がしたいんだ、全く･･･」
『そう呆れるでないわ。なぁに、少しばかり傷の量を診ただけのこと･･･。いや、嗅いだだけ、かのぅ』
どうでもいい。
優一にとってはすごくどうでもいい話だった。
しかし、不思議と金狐の声は嫌いになれず、耳はしっかりと声を追いかけている。
『･･･さて、ユウイチ』
不意に彼は名を呼ばれた。
思わずハッとして狐の方を振り向く。
『どうかえ、二人同時になど、簡単に出来るであろう？』
「･･･『背負う』事は出来ねぇけど、霧なら、なんどかなるべ」
呼ばれた方の勇一は、そこまで下を向いて呟くと、優一の方を見た。
「剣城の頭領、」
「･･･」
「そこ、動くでねぇだよ」
「･･････一体、何をする気なん？」
「傷、治したげるだ」
ドキリ、と優一の心臓が大げさに跳ねた。
先程助けて貰った事もあり、何となくは警戒心が溶けかけてはいる物の、やはりこの少年は敵なのである。
何をされるかなんてわからない。
「･･･金道、蓮姉ちゃんも隣に座らせてな」
『やれ、狐使いの荒い主よのう』
しかし、当の本人達は何でも無いかのように淡々と事を進め行く。
狐は蓮を尻尾でたぐり寄せて、気を失った蓮を優一の隣に座らせた。
余りにも混乱していて気持ちが頭に付いていかないのか、優一は文句を言うでも無く、唯々傍観しているだけであった。
そんな優一に、勇一が悟りきったようにため息を吐いた。
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京夜(プロフ) - アルテナさん» ありがとうございます！！ コメント、とっても嬉しいです！！ これから更新スピード上げられるように頑張りますッ！ (2015年1月4日 22時) (
レス) id: c45efebd4a (このIDを非表示/違反報告)
アルテナ - とても面白いです！！！続きが楽しみです！更新頑張ってください！ (2015年1月4日 20時) (レス) id: ab1d996a39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：京夜 | 作成日時：2015年1月1日 12時
