第五十六話:妹思いの兄 ページ11
__縁郷・迷いの森・夜
スタタタッ・・・
林の中に一人の人影がいた。それは凄い速度で走っている。正体は歯車火成汰だ。
彼は不機嫌な顔をしながら、愚痴を零していた。
火成汰「あーあ。帰るって時に、嫌な奴と会っちまった。あいつ本当にAと同じ女か?俺の妹の方が何倍も何十倍も気品で可愛げがあって家事も出来て気づかいがあっていい女だっつーの。」
火成汰はAのことを少々溺愛しているが故にそんなことをあっさりと言った。他の人が聞けば間違いなく「何か気持ち悪い」と思うであろう。・・・いや、思うはずだ。
火成汰「あんな女、絶対嫁の貰い手とかねぇだろうな〜。それで勝負したら無敗でAが勝つわ。うん絶対そうだ。・・・・いやまてよ、Aに男ができるなんて・・何を考えているんだ俺は。」
自分の発言を取り消したいとひどく思った。それだけ火成汰はAのことが好きなのだ。
火成汰「というか、そもそも縁郷以前にこの迷いの森に来る人間なんてそうそういねぇしな。そんな心配する必要は・・無いか。」
だが同時にこんなことも思っていた。
火成汰(・・・Aには幸せになってほしい。その為には、城下町へ連れて行って少しでも今の外の世界に触れた方がいいなんてことは俺だって分かっている。分かってはいるが・・・)
火成汰はAの十五年前に負った火傷のことを思い出していた。あの悲痛な叫びと痛さに耐えながら顔を歪めていた幼き妹の顔を。
火成汰「・・・やっぱり、無理だ。あんな危険な目にもう二度と合わせてたまるか。」
シュタッ!トンッ
軽く飛び、着地した。
火成汰「あれ?ここ精霊達の憩じゃないか。俺途中で違う方向へ行ってたのか。」
愚痴や考え事をしていた火成汰はいつもは真っ直ぐ行く道を右に曲がってしまったのだ。
火成汰「ま、いっか。結果的には帰ったわけだし。」
Aが自分の帰りを待っているだろうと少し駆け足で行こうとした。が、ここで火成汰はいつもとは違った異様なことに気が付いた。
火成汰「ん?」
それは自分から見て左の林の何本かが不自然だったことだ。
近くに寄ってみる。
火成汰「・・・これ何だ?」
暗い為目が慣れるまでよく見えなかったが、だんだん慣れてくるとはっきりと見えるようになった。
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雨晴(プロフ) - 春夢さん» はい、何とか書いていきたいと思っております。コメント兼小説をご覧いただきありがとうございます! (2016年8月14日 12時) (レス) id: 3adc52b091 (このIDを非表示/違反報告)
春夢 - 更新頑張ってください! (2016年8月14日 12時) (レス) id: 7df5f2c691 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨晴 | 作成日時:2016年8月10日 1時