遅すぎた first love (ページ9)

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ym side

最近は仕事で一緒になる度に知念に文句を言われる始末。知念は俺がうだうだ言いながら行動に出ないのがムカつくらしい。
俺だってこんな自分にムカつくよ。

でも、言い訳させて。最後が酷すぎた。俺らにとっての最後の思い出は、あのとき。俺が伊野尾ちゃんを冷たく振ったとき。

伊野尾ちゃんの顔を見る度に、あのことが思い出されてなかなか声はかけられないでいた。

あんなに仲が良かったときが嘘のように、伊野尾ちゃんは俺に目を向けることはないし、気にかける素振りもない。

どうせなら、もっと怒ってよ。その方が、ずっと楽だったと思う。

伊野尾ちゃんは大人だから、自分の気持ちをすぐにしまい込んで次に見たときは普通だった。俺には一切関わらなくなったけど。

大ちゃんはきっと全部知ってるんだと思う。メンバーは全員、俺らの様子に異変を感じても触れなかったけど、大ちゃんだけは言ってきた。

「俺、ちゃんのこと狙ってるから」

あのときは、大ちゃんに宣戦布告みたいなのをされて戸惑いが多くて、あの丸い瞳が初めて怖く感じて、何も言えなかった。

でも今思えば、大ちゃん俺に怒ってたんだよな。あのときから伊野尾ちゃんのこと好きだったんなら尚更、俺が許せなかったんだろう。

「…だから、何?」

そろそろイライラしてきたらしい知念が壁に寄りかかった。

「その話だったらいつも聞いてるよ。分かったから。でも、それは涼介がこのままでいい理由にはならないから!もし涼介が、今のままでいいっていうんなら別だけど、」
「っ、ご、ごめんって!」

楽屋の隅でこそこそと話していたはずが、俺の声が予想以上に響いたらしい。メンバーがこっちを向いた。
…伊野尾ちゃんも。

目、合ったっ、久しぶりにカメラが回ってないところで目が合った。すぐに逸らされたけど。

「やまちね、痴話喧嘩かよ～!」

「…違うよ」

薮ちゃんのからかいに皆が笑う。伊野尾ちゃんも。俺に直接関わらないけど、俺の話はするし、メンバーの輪の中に自然に入る。これが伊野尾ちゃんの距離のとり方なんだ。大人で感心する、だけど、傷つく。