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ar side
慧と付き合ってもうすぐ1年。今では、ほぼ毎日俺の家に帰ってくるようになった。
ずっとずっと好きだった慧。Jr.のときに初めて見て、女の子だと思ってから、男の子だってわかっても、ずっと好きだった。
でも、好きだから気付いちゃったんだよね。山田のこと、好きなんだろうなって。
そこまで多く関わるわけじゃないくせに、いつも目は山田のこと追ってたから。
本当はそのことに触れたくなかったけど、一度、言ってみた。
「いのちゃん、山田のこと、好きなの?」
違うって、言って欲しかった。あいつはカッコいいから、目を引く存在だから、だから見ちゃうんだって、思いたかった。
でもいのちゃんは否定しなかった。
「え…分かる?」
目を丸くさせたあとの潤んだ瞳は忘れられないくらいに綺麗だった。
照れくさいねって、こっちが赤くなってしまうくらいに顔を赤くする慧を見て、思った。
この気持ちを、失わせちゃいけない。
それからは、自分が慧に近付くことより、山田とのことを応援することを優先した。
好きだから。俺の初恋は、好きな相手のために諦めた。
でも、諦めたはずの俺にもチャンスは回ってきた。慧が振られたって。
身勝手だけど、山田が憎かった。あんなに仲良くしてたくせに、あんなに慧のことドキドキさせておいて、なんでそんなに冷たく振るの。
俺も悲しかったけど、これは自分に与えられた最後のチャンスだと思ったから、慧に寄り添い続けた。
俺の方が、山田なんかより慧を大切にできるから。
そう思いながら、慧の悲しさにつけ込んだ。
こうするしかなかったもん。
付き合ってから結構経つけど、慧はきっとまだ山田のことを考えてる。だよね、もともと慧は俺なんて眼中になかったの、知ってるから。
きっと慧は、俺のことが好き。でも、山田のことも好き。なんだろ?
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作者名:take a walk | 作成日時:2024年1月14日 2時