遅すぎた first love (ページ13)

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ym side

驚いた。普段はああやって一気に飲んだりしないのに、急に飲んだかと思ったら本音が全部流れ出た。

目の前でなにかぶつぶつ言いながら突っ伏してる知念のつむじを見つめる。

「ほんと…?」

さっき言ったこと、本当?伊野尾ちゃんが言ってたの?酔った知念の作り話じゃなく?
だって、あんなに俺に近づかない伊野尾ちゃんなんて、俺のことを嫌ってるとしか…

『お互い遠慮して、勝手に悪く考えてすれ違って!』

あ、これ、俺の思い違いなの?すれ違ってるの…?
伊野尾ちゃんも、同じだったら?俺に嫌われてると思ってたら?
きっと俺と同じように嫌われてるんだってドツボにはまる。あの人だったら絶対に悩み尽くしてしまう。
だいたい、あの大人な伊野尾ちゃんが、俺にふられて怒って口きかなくなることなんてない。

なんでそこまで考えが至らなかったのか。そんなのとっくに知ってたのに…。

「っ、ばか」

こんな俺をいつまでもサポートしてくれる知念に感謝しながら家まで送ってやった。

自分の家に帰って、ふと思う。今日がラストチャンスだって、言ってたなぁ、知念。一ヶ月は仕事が被らないし、俺が忙しい時期に入る。

時計を見る。まだ日はまたいでいない。

ちょっと考えて、スマホを手に取った。おそるおそる操作して、伊野尾ちゃんの連絡先をタップする。

コールが５回程続いたとき、怪訝そうな、大好きな声が聞こえた。

「…もしもし?」

「、あ、もしもし?山田です」

「知ってる」

ど、どう切り出すかを考えてなかった…。

「あ、の、俺ら、1ヶ月くらい仕事被らないんだけどさ、電話するのもラストチャンスだから、今、伝えとこうと思って」

「…なにを?」

終始疑うような口振りは、俺がどれだけ伊野尾ちゃんを傷つけてしまったかを物語っている。

「あの、次会ったとき、話がしたい」

「っ、なんの?」

「なっ、なんでもいいでしょ!き、切るからっ「ちょっ」

勢いで切ってしまった。その声が俺に向けられていることにも、全部聞いてくる伊野尾ちゃんにも戸惑って。

トーク画面を開く。

『とにかく次、会いたい』

数分経って返ってきたのは、わかった、の一言だった。