遅すぎた first love (ページ11)

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ar side

知念に連れ出された慧は、神妙な顔して戻って来た。何、言われたんだろ。

ちょっと気になって聞いてみようか迷ったけれど、慧が先に話を戻してしまったから聞けなかった。
なんだか、不安になる。俺と話をしながら、目は上の空。

「慧、聞いてる?」

「聞いてるよ〜…」

話にはついてくるから、聞いてるのは本当だろうけど。

ちらっと知念の方を見ると、今日も山田と楽屋の隅っこで話していた。最近はずっとあんな感じの2人。
メンバー間では、今度のカップルはやまちねなんじゃないかって言われているとかいないとか。
まあ、山田と慧はこう見えてまだ好き同士だという雰囲気の方が有力だけれど。
絶対に、そのことについては誰も触れない。俺と慧が付き合ったから。

やまいのが関わらなくなって、一瞬光くんが突っ込もうとしたけれど、あのときは薮ちゃんに止められて、そっからは誰も、気づいているけど気づいてないふりしてる。

ただ最近、そわそわした雰囲気がグループ内を漂っている。

というのも、さっき俺が触れたやまちね。あいつらがこそこそ動き回っている。なにか行動してる訳じゃないけど、なんだか怪しいし、さっき知念が慧を呼び出したのを見て、俺は確信を持った。

何か、企んでる。

少なくとも慧のことについて。

仲直りしたいっていうのだった良いけど、俺から取ろうとしてるのかもって思ったら居ても立っても居られなくなった。

隣りに座って話している慧の手をそっと握った。驚いてやっと、俺の目を真っ直ぐ見つめた。

「どしたの?」

こうやっても、俺が慧の１番になれないのは知ってる。慧にとっては、山田に奪われた方が良いのかもしれない。

「ううん」

「なんだよ～(笑)」

そうやって楽しそうに笑うのは、山田といるときとは違う感じだって、わかってるよ。