うつくしき人は寂として石像の如く 7 ページ50
「異能を遣え、小娘。貴様を叩き潰してやる」
これは嫉妬だ。
芥川は、私に嫉妬しているのだ。
「…哀れだね。君も、私も」
「黙れ」
芥川は異能力で私を投げつけた。するとちょうど投げつけた方向にコンテナからでてきた敦くんが。もちろん、瞬時に異能力を発動しようとしたが、間に合わなかった。敦くんは私のことを受け止めきれず、二人でそのまま壁に激突する。
「いった…………」
「Aちゃん!?どうして……」
「殺す積りで刺したが…、不完全乍ら虎の治癒力が資されている」
「っ………此処は…海?」
芥川は敦くんの傷口を蹴った。傷口を蹴られた敦くんは、痛みに顔を歪める。あたりを見渡し、今の現状を把握したようだ。
「密輸船だ。武器弾薬の類を運ぶ。今日は貴様の為の貸切だが……。引渡しまでもう数刻もない。人生最後の船旅を楽しめ、人虎」
「…断、る」
芥川は敦くんの傷口をぐりぐりと足で踏みつけた。もうこれ以上はやめろと、私は芥川の足を掴んだ。しかし、ふり払われた反動で倒れると、上から頭を靴で踏まれる。
「っ……!」
「邪魔だ。貴様はあとで相手をしてやる」
「ぐっ…彼女は……Aちゃんは関係…ないだろ……!彼女だけでも解放しろ……!」
「貴様の意思など知らぬ。その女は僕の獲物だ。 故にそいつは僕の所有物同然。弱者に身の振りを決める権利などない」
聞き捨てならない言葉が聞こえた。
いつから私は芥川のものになったのだ。もっと別の言い方があるだろうに。
「弱者は死ね。死んで他者に道を譲れ」
芥川はさらに力を込める。頭が割れるようにいたい。潰されるのではないのか。必死に芥川の足を掴むが、びくともしない。
「武器庫から持ち出したか」
「彼らを逃がして」
すると、銃を構える音がして、音の発端をたどると、鏡花ちゃんが芥川に銃口を向けていた。芥川は振りかえる。
「外の世界に触れて心が動いたか?」
鏡花ちゃんの持っていた銃が突然切り裂かれた。芥川の異能力だ。一瞬にして切り裂かれた銃に驚いた鏡花ちゃんを、芥川は首を絞める。
「やめて……!!」
私は、苦しそうにする鏡花ちゃんが見ていられなくて、芥川にやめるように手で足を殴る。しかし、全然効いておらず、私の言葉など気にもせずに話続けた。
「【どん底】を知ってるか?其処は光の差さぬ無限の深淵だ。有るのは、汚泥、腐臭、自己憐憫。遥か上方の穴から時折人が覗き込むが、誰もお前に気付かない。一呼吸ごとに惨めさが肺をやく」
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塩わさび - きつね?さん» コメントありがとうございます!その上、私なんぞに勿体ないお褒めの言葉まで添えていただけるなんて嬉しいです…! (2018年3月29日 23時) (レス) id: e627b6cc05 (このIDを非表示/違反報告)
きつね? - 敦くん可愛すぎます!神ですね!!!最高!!! (2018年3月29日 20時) (レス) id: 80a3d77369 (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - 、さん» ご指摘ありがとうございます。すみません今気がついたので外しました (2018年3月27日 19時) (レス) id: a1a66c3c7b (このIDを非表示/違反報告)
、 - 実在する人物、団体、アニメキャラ等を扱う二次創作になりますのでオリジナルフラグ外して下さい。違反行為で違反報告の対象になります (2018年3月27日 18時) (レス) id: 7f197fb369 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:塩わさび | 作成日時:2018年3月27日 17時