実況しましょ、独壇で。 (ページ7)

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六基好きなものを共有出来る幸福。ページ7

「呼び方はともかくとしてー、その敬語はなしにしてね！実況中はリスナーさんがいる手前しょうがないと思うけどさ、今ここには君が敬語使わなかったからって怒る人はいないんだし！」

「むしろ敬語使っちゃったらおついちさんに怒られちゃうかもだよ」

「怒りはしないよ！ちょっとむっとするけど！」

「それ怒ってるって言わねーの？」

「俺の中では怒ってるって言いませんー！」

わちゃわちゃわちゃ。楽しげに話をする三人を、Aはじっと見つめた。

彼女には、生まれてこの方本音を話せるくらいの友達はいなかった。ゲームが好きであるということを隠していたから、好きなものの共有は出来なかった。ただ、自分に優しくしてくれる知り合いがいるだけ。彼女の中での感覚は、それくらいのものだった。そうして多分、その感覚も間違ってはいない。

彼女が敬語を使っているのは、日常的なこと。そうして。「敬語なんて使わなくていいよ」なんて、今まで言われたことは、なかった。そういうものなんだと、周囲は受け入れてしまっていた。

「んー、あの、えっとね。せっかく大人と友達になるんだからさ。これからは俺達に、いっぱい甘えてくれてもいいよ！」

「あ、それいい。Aちゃんに目一杯甘えてもらえるのは大人の特権だよねー」

「同級生だと遠慮しそうだっていうのは何となく分かる。」

両親は共働きで、いつも忙しくしていた。そのおかげで自分は裕福な生活を出来ていたし、だからこそゲームが出来ていたし、だからこそ実況者としての土台を築くことが出来た。でも、裕福だったから幸せだったかと言えば、そうだとも言えるし、そうではなかったとも言えた。

自分の面倒を見てくれるのは両親が雇った若いメイドさんで、だから、優しくしてくれるし面倒を見てくれるけれど、親しくなってくれることはなかった。自分如きが烏滸がましい。そんな人だった。甘えることは出来なかった。これ以上迷惑を掛けられなかった。

…でも。でも、彼らなら。好きなものを共有しただけの、彼らなら。

「…わたし、」

「うん？」

「私、……甘えてしまっても、いいんですか？」

「もっちろん！何なら俺の妹になってくれてもいいよ！」

「なんだおっつん妹属性持ちか？」

「ちがわい！」

「妹になるなら俺達がお勧めだよ！多分ちゃんとお兄ちゃん出来るよ！」

「多分おっつんじゃあお兄ちゃんって言うより叔父さんだしなー」

「失敬な！俺だってお兄ちゃん出来るよ！多分！」