-弟- ページ8
‥
｢これが白鳥沢のデータです｣
対白鳥沢戦前日。
マネージャーから渡された紙束を捲っていくと、見知った顔を見つけた。
──影山A 三年 九番
あの日から、一度も会っていない実の兄だ。高校に入ってからは�爛屮薀奪�・スワン�瓩覆匹噺討个譴討い襪蕕靴い�それがなにを意味するかは知らない。
｢なあ影山！｣
｢あ？｣
｢この九番の人って、お前の兄ちゃんだったりする！？｣
｢それがどうした｣
｢すげぇ似てる｣
似てねぇよ。中学時代兄さんは女子に囲まれてるような人間だったんだぞ。
｢影山Aかー。影山、なんか弱点知ってたりしないの？｣
｢俺が兄さんと最後に試合したのは俺が中一のときなんで、アテにならないと思います。兄さんが卒業してからは会ってないんで｣
｢会ってない！？｣
あの日。部活から帰ってきて兄さんの部屋を開けたとき。空っぽの部屋が脳内に焼き付いて離れない。
どうして兄さんはなにも言わず出ていったのか。兄さんが白鳥沢に入学したことを知ったのはだいぶ後だった。
｢つーかなんだこの髪型。昔からこれ？｣
｢はい。中学のときから襟足だけ伸ばしてました｣
｢よぉーしコイツでネッチ狙ってくぞ｣
｢このくらいなら無理じゃないか？｣
｢北川第一出身ってことは、及川とも同じか｣
｢二人とも仲は良かったと思います｣
｢白鳥沢と青城か……｣
*
｢よーAちゃん。ワガママ要求続けてる？｣
｢及川。相変わらず性格悪そうなツラしてんな｣
六月三日。インターハイ県予選決勝。こうしてネット越しにコイツの顔を拝むのは何回目だろう。
三年前はネットのこっち側で、白鳥沢を倒そうと奮闘してたのにね。
なんで白鳥沢に行ったのか、なんで誰にも報告しなかったのか、なんてこの際どうでもいい。きっとトビオは今でも知りたがってると思うけどね。
｢兄も弟もワガママなんて、さすが兄弟だよね｣
｢……｣
飛雄に大切なことをなにも伝えてないのに、Aは呆れるくらい飛雄を大切に思ってる。名前を出しただけでこうしてこちらを睨んで去ってしまうくらいには。
分かりやすい。こんなにも分かりやすいのに、飛雄はなにも分からない。兄の心弟知らずってか。
まあ、春高も俺らが勝つから白鳥沢と烏野が戦うことはないけどね。
‥
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作者名：幸 | 作成日時：2019年8月7日 23時
