-兄、帰省 後- ページ22
‥
「おかえり、飛雄。お疲れのところ悪いけど付き合って」
「……おう」
こうして家の前でボールに触れるなんて何年振りだろうか。なんだか何でもかんでも懐かしく感じてしまう。
この前三年振りの再会を果たしたばかりなのにな。しかもネットを挟んで。俺のヒールっぷりはなかなか様になってたと思う。
「……なんも言わず家出ていってびっくりしたろ」
「……部屋、見たとき、すげぇ虚しかった」
「白鳥沢から推薦来なかったろ」
「だから、一般で受けたけど落ちた」
「ははは。推薦行かなかったのは俺のせいだけど、一般で落ちたのは俺関係ねぇや」
やっぱこいつ、なんでも上手いけどオーバーしぬほどうめぇな。俺も公式戦で飛雄のトス打ちたかったなァ。
「な、俺さ、全中県予選の決勝観に行ってたんだけど、知ってた？」
「！ …………知らね」
「だろうな」
「……及川さんに会う度に兄さんの名前出される」
「げ、まじ？ それはあいつの性格の問題だろ。俺も会う度に飛雄の名前出されるぞ」
「日向と俺が一回白鳥沢行ったの知ってたか？」
「ああ、若利に聞いたよ。偵察に来たんだって？」
それを聞いて肝が冷えたよ。会わなくて良かった、なんてガラにもなく安堵したものだ。
白鳥沢まで偵察に来るなんて烏野の一年どうなってんだよ、教育が行き届いてないぞ。
「俺が兄さんに勝てない理由、言われたとき分かった」
「……」
「兄さんは全部見透かした上で三年間動いてたのか」
「……俺さァ、お前が大好きなんだよ」
「は、」
「お前のためなら俺はどうなっても良いんだよ」
「……」
「でもさ、この三年間全くと言っていいほど�犒擦舛磴鶚瓩靴討覆�ったよな。ごめんな」
「……なんで謝るんだよ」
「懺悔、的な？」
「んなのしなくていいだろ。兄さんは、俺を思ってやってたんだろ」
真っ直ぐに俺を見つめる瞳は力強くて、いつの間にこんな目をするようになったんだ、と寂しくなった。
「ははは、飛雄も俺のこと大好きだな」
「なっ、べ、べ、べ、別に」
「なんだよ、嫌いか？」
「そんなわけないだろ！」
「っふ、ははは」
俺よりほんのちょっとだけ背が高くなってしまった飛雄だけど、あの頃と変わらず俺の可愛い弟だった。
‥
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作者名：幸 | 作成日時：2019年8月7日 23時
