-弟- ページ14
‥
ファイナルセット。14-15。もう、あとがない。
「飛雄」
キュ、とシューズが鳴る。
口元に笑みを貼り付けた兄は、冷ややかな瞳で俺を見据えていた。
「なんでお前が俺に勝てないか、教えてやろうか」
「そのままじゃお前は俺に一生勝てない」
目を瞠る。
俺は、今までに一度でも兄さんに勝とうとしたことがあっただろうか。だって、兄さんはずっと俺の前を走り続けていて。でも俺は今日、兄さんに勝たなくてはいけない。今までずっと俺の前を走り続けていた兄さんを、今、追い越さなければならない。
出来ることなら、俺は高校でも兄さんとコートに立ちたかった。兄さんがトスを呼び、俺が上げて、ハイタッチする未来が、もしかしたらどこかにあったのかもしれない。春高に出場を決めて、笑い合う未来が。兄さんはもう忘れてしまったであろう、一緒にオレンジコートに立つという約束を果たせた未来が。
訪れないであろう未来を引きずっていても仕方がないんだ。俺は、俺達は東京に行かなければいけない。
「負けねぇ」
兄さんにも、ウシワカにも、白鳥沢にも。
今日ここに来たのは、兄さんに会いに来たわけじゃない。
一進一退の殴り合い。19-20となれば、攻める以外の選択肢はない。
誰に上げるか、なんて。
試合終了のホイッスルが鳴る。
セッターの肩を抱く兄は、俺と目が合うと穏やかに笑った。
‥
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作者名:幸 | 作成日時:2019年8月7日 23時