Her Broken Hearts. (ページ50)

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ショッピングバッグを荷台に詰めて

後部座席にはキャリーの中で眠るワンコロ。

Aが助手席に座ったところで

車を発車させる前にひと呼吸置いた。

「廉、そんなに気に入ったんだ？笑」

『いや…まあ、そやけど…』

「可愛いなあ～、名前、何にするの？」

『…なんやろな。』

「私、この子に会いに廉の家いっぱい行くよ？笑」

『…、、、』

横をチラッと覗けば

後部座席の方に体を乗り出してるAが

頬を緩ませながらワンコロに手を伸ばして撫でている

『A、アパートの契約来月いっぱいまでやろ』

「え？うん、そうだけど。」

『更新、せんでいいから。』

「え？なんでよ！笑、するよ！笑」

『ええから、更新すんな。』

「なんでって笑」

あーあ。ほんまはこの後ちゃんと

ロマンチックなシチュエーション考えてたのに。

なーんも知らんコイツは笑っとる笑っとる。

『…A。』

「なに。笑」

『こっち向いて。』

「んもぉ、なに。笑」

『お前のせいで全部計画パーになったやんけ』

「なんの計画よ。笑」

そんな、

小馬鹿にしたように笑ってられるのも

今のうちだけやからな…

『お前は、アパートの更新はしない。』

「いやだから、するってば。笑」

『このワンコロは、俺とお前で育てる。』

「はいはい、私が世話しに通えばいいのね？笑」

『…なんでここまで言うて気付かんねんアホ、』

「なにがよ。笑」

『ああああ！！！もお！！』

「え！？もぉなに？笑」

"廉、さっきからどしたの？笑" と

笑っているAに少し背を向けてポシェットを漁る

用意していたその小箱を隠し持って

Aの方に体を向ければ

まだ、笑っているA。

変に勘付かれるより、こっちの方がええか。

『…A、黙って。』

「…え？笑、…うん。」

俺の真剣な目を悟って少しシュンとしたAの

俯いた視線の先に、その小箱を差し出した。

「……ぇ、」

それを見てやっと、理解したのか

俺はまだ何も言うてないというのに

その瞬間、秒で目が潤み出すA。

『…A。』

「…はい…っ、」

俺を見上げたAの目からはすでに

涙が大量に溢れ出していた。

『…ふっ(笑)俺まだ何も言うてへんけど？笑』

「…じゃあ、早く言って…っ、」

『…俺と、結婚しよ？』

「廉…っ、大好き…っ！」

▲ 完。