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『…………おった、、、ハァ…ハァ…』



走って走って、俺がAを見つけた場所は

草むらの中のベンチの裏側だった。


…いや、なんでそんなとこやねん、





「………れん…っ、」


俺の姿に気付いたAは

目を真っ赤にしてこちらを見上げる。





俺は、震えて動けなくなっている様子のAに寄り

持ってきていた上着を頭から被せて抱き寄せた。



『ハァ…ハァ…もうお前…ほんまに…、、、』



思いっきり全身を震わせて脱力しているAは

呼吸が乱れて過呼吸気味になっていた。



『大丈夫やから。落ち着け。深呼吸しぃ…っ!』





ひとまず少し落ち着いたAを連れて車へ戻る。

Aを後部座席に乗せてAの家へと走らせる。


チラッとバックミラーで様子を伺えば

端に座り、俺の上着を頭から被って丸まっていた。



…なんやねん、ほんまに傷付いて帰ってくるとか。



少しはこうなることを望んでしまっていたはずなのに

本当にAが傷付けられているのを見ると苦しくて

あの時、失敗すれば…とか思った自分を憎んだ。









Aの部屋に着き、一緒に入れば

お洒落に飾られたインテリアの中に

恐らく今朝、迷いに迷った洋服、だけではなく

新しく買ったのであろうタグ付きの下着までが

ワンルームの部屋中に散らかっているのが目に入る。



…、頑張ったんやな。



男の俺にこんな光景を目の当たりにさせておいて

本人はそんなこと気にすることもなく

黙りこんでボーッと、ベッドの上で座っている。





『…ん、これ飲み?』


冷蔵庫から勝手にお茶をコップに注ぎ

ベッドに腰掛けて手渡すと

ひと口だけ飲んで俺に返してきた。


俺はその残りをカブッと飲み干す。





「……れんっ、」


『…うおっ!』



俺がそのコップを目の前の机に置いた途端

Aに腕を引っ張られ、バランスを崩す。


そして、気がついた時には

俺はAに覆い被さるような体勢になっていた。





「…れんっ、、、抱いて…っ、」


『…はっ?!』



突然突拍子もないことを言うAから

慌てて離れようとするも

完全にホールドされてしまっている状態だった。



『……、なに、言うてんの?』


「…お願い。廉しかこんなこと頼めない…っ、」


『いやいや…意味わからん。』


「…お願いだから…っ、、、グズッ」



俺は驚きのあまり、泣き出してしまったAを

ただ見つめることしかできなかった。





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作者名:Raine. | 作成日時:2020年5月27日 17時

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