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家についてしまう前にもう一つ
私には廉に相談したいことが残っていた。
廉は私の不安要素を取り除くのが上手いから。
『私さ、デートすら初めてで怖いんだけどどうしよ』
「…まじで言うてんの。笑」
『手すら繋いだことないんだよ…』
そう、私には恋愛スキルが全く備わっていない。
大学時代にも、急な段差を前にして
好きだった人に手を差し出して貰ったのにも関わらず
それを断ってしまうほど、本当に免疫がないのだ。
「ふはっ(笑)んな今繋いでみる?笑」
『んも!そう言う話じゃないってば!』
「ンハハハハハハハッ…!」
『廉に聞いた私がバカだったっ!』
なに着て行こう
どの下着つけて行こう
明日はネイルにも行こうかな
楽しくてワクワクするような悩みの一方では
失敗しないように
変だと思われないように
面倒くさいと思われないように
重いと感じられないようにと
頭の中でゴチャゴチャと色んな心配が駆け巡る
25歳にもなって、初めての彼氏なんだもん
それに、初めて好きになってくれた人だし
私は、意地でもこの人にしがみつかないと
もうあとはないような気がしていた。
『私、明後日頑張ってくるね』
私がそう廉に宣言をしたのも
一種の願掛けのようなものだった。
「じゃ俺は、お前が失敗したときのために
夜は家でゆっくりしといたるわ。ヒッヒッヒッ」
『ねぇ本当に失礼なんですけど!
待たなくていいから!笑』
廉がふざけたことばかり言うので
私の悩みがどうでもいいもののように思えてきた。
そうこう話しているうちに私の家の前に着いていて
廉はもうすでに酔いが覚めているようだった。
それでもやはり多少は愉快になっているみたいだが。
『今日もありがと、気を付けて帰ってね』
「おん。」
『おやすみ。』
「…、」
いつもはここで廉がおやすみと返してくれるが
今日はその "おやすみ" がない。
さらには、玄関を開けて中へ入ると
なぜかその玄関の扉を廉が掴んでいた。
『…ん?』
「まああれよ、」
と、なんの前触れもなく話し始める廉に
私の頭の上には大きなハテナがポンッと浮かぶ。
「嫌われるかもとか心配せんと
Aの自然体でおるのがええんちゃう。」
あ、ちゃんと答えてくれるんだ。
「それと、おめでと。彼氏。」
と、ボソッと呟いて廉は
私の戸締りの音を待たずして帰って行った。
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作者名:Raine. | 作成日時:2020年5月27日 17時