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前回の集まりから2週間後の今日もまた
ちょっと残念でも可愛げのある優太と
かなり残念すぎる哀れなAに呼び出され
いつもの居酒屋に集まっていた。
『なんでこんな頻繁に会わなあかんねん』
と、口では言っているものの
本当は俺も、この時間を楽しみにしているのだ。
「ね!2人に聞いて欲しいことがあるの!」
「えぇ〜俺もうAの失恋ネタ飽きたから廉パス」
『俺も無理。とっくに飽きてる。』
と、いつものように
俺と優太でAの擦りつけ合いをしては
結局優太が負けてAの話を聞く羽目になるのだと
この瞬間までは思っていたのだが
「私ね…!!彼氏ができた…っ!!!!」
『…………、、、…は?』
「……んぇぇぇえええええええ?!?!」
俺の声はうるさい居酒屋に消え去り
逆に優太の叫びは居酒屋中に響き渡った。
『…お前、冗談キツいぞ。笑』
「冗談じゃないってば…!」
「えええええー!!Aまじっ?!?!」
「本当だってば!笑」
繰り返していた失恋を目の前で見てきた俺たちは
今、Aがとてつもなく嬉しそうに話す言葉が
どこか知らない国の言葉のように聞こえていた。
『騙されてんちゃうの。笑』
「そんな人じゃないもん…っ!…たぶん」
「おいっ!たぶんってなんだよ!」
「私だって怖いけど!好きって言ってくれたもん!」
どうやらその彼氏とやらには
向こう側から告白してくれたらしく
「そんなの断る理由ないでしょ!!」
と、初めての出来事に心を弾ませていた。
「それでね!明後日初めてデートするの!!」
「まぁじかっ!!A、良かったね!」
「うんっ!本当に嬉しい…っ!!」
優太は、Aの話を同じように喜んでいた。
俺も同じようにおめでとうと言えばいい話なのだが
『大して好きでもない相手と付き合うん?』
もう、失恋話を聞かずに済むし
Aの初彼氏に喜んであげるべきなのは
十分わかっている。
けれど、今夜の俺はどうも捻くれているらしく
Aが嬉しそうになにか言うたびに
そのテンションを下げるようなことばかり
口してしまっていた。
「私って惚れやすいタイプでしょ?心配なしっ!」
そしてそんな俺とは対照的に
今夜のAは俺の嫌味すら聞き流せるほどに
心が満たされているようだった。
…俺には一切惚れへんくせに。何言うてんねん。
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作者名:Raine. | 作成日時:2020年5月27日 17時