笑っていればそれで。 ページ8
「貴方が笑っていれば。」
貴方が笑っていれば、幸せで居れば。
「大好きだった。」
オロチさん。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿
＿
「A。おめでとう。」
「Aちゃんおめでとう！」
いろんな方から祝福される。
「ありがとうございます。」
隣に居る方も幸せそうに笑っている。
私は白いドレスを少しあげ、歩く。
結婚式だ。私の。
隣に居る方はとても優しくて、私を大切にしてくれる方。分かっている。分かっているんだけど。
私の頭に残る方は違う方で、
オロチさん。
＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿
1年前
「ねぇ。オロチさん。私ね、今日プロポーズされたの！」
貴方の反応を見たかった。
貴方が止めてくれると思っていた。
だけど答えは違くて。
「そうか。良かったな。おめでとう。」
彼は微笑んで私の頭を撫でてくれた。
違う違う…
そんなんじゃ…
「うん！ありがとう！」
気づいたら私は笑っていた。
＿＿＿＿＿＿
＿＿
私は結婚式場を見渡してオロチさんをさがす。
私の夫となる方と１回離れ、さがす。
「オロチさん。」
人気のない場所にオロチさんは居た。
「オロチさん、来てくれたんだね。嬉しいよ。」
「あぁ。A、ドレス似合ってる。」
「ありがとう。」
これ以上オロチさんを見ていたら泣きそうになりそうだった。
彼は私を心から祝福してくれている。
だけど心が痛い。
「オロチさん、さようなら。」
手を振り、急いでオロチさんに背を向けて歩き出した。
最後にオロチさんを見れてよかった。会えてよかった。
もうオロチさんを呼ぶことはないし、会う事もしない。
大好きだった。オロチさん。
私の初恋の方。
グイッ
手を握られた。
つい振り向いてしまった。
「好きだ。」
あぁ。聞きたくなかったな。
今聞きたくなかった。
「Aがこの婚約話断ると心のどこかで思っていた。だが違っ……」
私はオロチさんの唇にそっと指を当てた。
「もう、遅いよ。オロチさん。時間切れ。」
私は溢れそうになる涙を堪えながら言った。
「大好きだったよ。オロチさん。だけど、それは過去。」
「……」
「バイバイ。オロチさん。」
私はゆっくりオロチさんの手をほどき、私を待つ彼の方へ歩いた。
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