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高揚 ページ29

父親と彼女との話の流れは掴めなかったが、とにかく女を用意した部屋まで運ぶことになった。あの星で運んだ時は気づかなかったが女はとても軽く、弱々しい。

それこそ少し力を入れてしまえばこの腕の中ですぐにただの肉塊になってしまいそうだ、と。

そんな物騒なことを考えていると、
「助けて頂いてありがとうございます」
女はどこか居心地が悪そうにぼそりと言った。思えば他人に純粋な感謝の言葉などかけられたことがないので、一瞬考る。腕に抱えられている彼女を見、また苛立った。
「…いえ」
とりあえず無難な返事だけ返しておくことにした。

部屋に着き、柔らかそうな寝具の上に女を置いた。自分の中では優しく置いたつもりではあったが、力加減は間違えていたらしく女が少し顔を顰めた。
少し苦しそうな女を見れば見るほどにぞわぞわと迫り上がる感情に奥歯を噛みしめる。
女は警戒するように周囲を見回している。何か酷いことをされないだろうか、と思っているのだろうか。
その様子はまるで、突然外から連れてこられて狭い籠に入れられた鳥のように見えた。

「あまり一人で出歩かない方がいい…です。柄の悪い連中もいます。明日の朝迎えにきます」
ひとまず父親に言われた通りの助言を伝えると、女はこちらを見て再度俯いた。実際には父親が根回しをする為、女を襲おうなどという愚か者はいないと思われる。
それはどちらかというと、どこかへ勝手に行かせない為の忠告だった。せめて鍵のある部屋を用意すればいいものを、と彼は気の利かない父親を心の中でなじった。
ーーこの女が逃げ出したらどうするんだ。

「わかりました。ありがとうございます」
ブロリーのその心中を知らずに女は礼を述べた。少しブロリーの気分が良くなる。

去ろうとしたブロリーの背中に女の鋭い視線を感じる。
「あ、ブロリーさん、待ってください」
返事の代わりに振り向き女を見る。女は少し驚いた顔をして、すぐに意を決したように言った。
「本当に、私の星は、失くなってしまったのですか…?」
真っ直ぐにこちらを見ている。怯えたその視線に高揚感を覚える。唇の端がぴくりと震えた。

ああ、とブロリーは理解する。不可解なその感情の正体は未だ解明できていないが、複雑に絡み合ったそれの一つが、女に対する『嗜虐心』だった。

「みんな消えた」
ーー俺が星を消したから。

自然と上がった口角を気づかれないように、すぐに前を向きなおして部屋から去った。

悪夢→←世話



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設定タグ:ブロリー , 夢小説 , ドラゴンボール   
作品ジャンル:アニメ
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ストロー(プロフ) - はなさん» そんな風におっしゃっていただけるとすごい嬉しいです…!現在停滞しておりますが頑張って完結させたいと思います!本当にありがとうございます! (2019年6月24日 13時) (レス) id: 3967770775 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - 文章がとても綺麗で感情が伝わって来て大好きです。陰ながら応援しています! (2019年6月17日 0時) (レス) id: acff344607 (このIDを非表示/違反報告)
みさき - ありがとうございます!ぜひこの作品を完結させて下さい! (2019年4月27日 18時) (レス) id: 20e162e3ba (このIDを非表示/違反報告)
ストロー(プロフ) - みさきさん» これが完結したらそうですね〜〜〜!!何も考えていませんでしたが何かでブロリー小説をかけたらいいなって思ってます!! (2019年4月27日 15時) (レス) id: 3967770775 (このIDを非表示/違反報告)
みさき - ストローさんはこれが完結したら次は何をかくのですか?パラガス書いてくれますか?ブロ×パラでパラ受けのもn……ゲフンゲフン。 またドラゴンボールを書いてくれると嬉しいです。 (2019年4月23日 21時) (レス) id: 20e162e3ba (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ストロー | 作成日時:2019年3月12日 22時

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