propose*027 ページ28
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離れる理由もきっかけも無かった私たちは、
涙もすっかり止まった今も変わらず抱き合っていたのです。
あれからどれだけ時間が経ったかなんて分からない。
「……赤葦さん」
「何ですか?」
「離れたくないです」
「俺もです」
そしてまた、お互い腕に力を込める。
いつかはちゃんと離れるんだろうか?
このままでは一生帰れなくなってしまう。
まぁ、人が通る気配すらないし大丈夫だよね。
幸せに浸りながら、私は目を閉じた。
「あらぁ、幸せそうで何よりだわぁ」
ちょうど目を閉じたそのときだった。
聞き覚えのない女性の声に心臓が飛び出そうなくらい驚いて、
反射的に赤葦さんを突き放してしまった。
振り返って見ると、70歳くらいのおばあさんが目の前に立っていた。
「えっ、いやぁ!?な、何のことですかねぇ?」
誤魔化すように目線をあちこちに向けつつ様子を見てみれば
本当に赤葦さんがいなくなっていたのです。
「ありゃ、見間違えかしら?ごめんなさいね」
なんとかこの場を乗り切れた。
それにしても、赤葦さんはどれだけ逃げ足が速いんだろう……。
「Aさん、ちょっとは加減してください……」
感心していたら、苦しそうな声が聞こえてきて
恐る恐る目をやると、お腹を抱えている赤葦さんがいた。
「え、そんな強く押したつもりはなかったんです……!すみません!!」
「まぁ、いいですけど……」
赤葦さんはよいしょ、とゆっくり立ち上がって
深いため息をついた。
私もつられてため息をつく。
「さっきは心臓飛び出るかと思いました。色んな意味で」
「すみませんでしたぁ!!」
「そのおかげでなんとかやりきれたんで結果オーライです」
「最初からそれだけ言ってくださいよ……」
へろへろになった私を見て、赤葦さんがぷっと噴き出した。
どうやらツボだったようだ。
「な、何がそんなに面白いんですか!?」
「なんというか、さっきまでの雰囲気はどこいったんだろうって思ったら、おかしくなって……」
……言われてみれば。
離れたくないとか言い合ってたのに、まるでそれが無かったかのような状態になっている。
なんだか寂しいような、悲しいような。
「まぁそれは置いておいて。
そろそろ帰りますよ、Aさん」
そう言って差し出される手。
私は考える間もなく それをとっていた。
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雪見ユキバ(プロフ) - くぅ、か、カッコよすぎだろ… (2019年5月2日 22時) (レス) id: a10d471b60 (このIDを非表示/違反報告)
まろん - マジすこです() (2018年12月23日 9時) (レス) id: 5890d86e26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めかこ | 作成日時:2018年10月21日 20時