微風は優しいキスを運ぶ

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この季節にしては珍しく、少し暖かい。心地よいくらいの冷たさの微風が吹いている。


「えっ…と、」

拓実「南野です。よろしくお願いします」

「よろしく…、」


次の瞬間、南野くんが私の腕を強く引っ張った。
その反動で私は南野くんの胸に思いっきり飛び込んだ。



「え……？」

壊れそうなほど速く動く心臓。
暖かい南野くんの腕の中。
何が起こったのか全く分からなかった。


岳「Aごめん！」


後ろから岳の声が聞こえてきた。
振り返ると、岳が申し訳なさそうな顔をして駆け寄ってきた。
足元に何かが触れ、見てみるとボールがあった。



岳「ごめんな、変なとこ蹴っちゃった」

「あ…うん、大丈夫…」

岳「ありがとな、南野」

拓実「大丈夫です」


岳はボールを抱えて練習に戻っていった。



拓実「すいません、危なかったんで…」

「え、いや…ありがと」

拓実「Aさん…で、いいですか？」

「うん、南野くん…？」

拓実「拓実でいいですよ」

「拓実くん…えーっと、じゃあ部室から…」



部室のほうを指さして歩き出すと、拓実くんは私の後ろについた。

やっぱり、関西の子なんだな…
言葉のイントネーションで、そう感じた。

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