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名前の知らぬ小鳥たちよ聞け 【彼方琴代:英】 ページ10

彼方琴代は気味が悪い。

「おはよむっちゃん。今日の琴代可愛い?」
「普通だ普通」

毎朝飽きもせず繰り広げられるこのやり取りに、初めこそ驚きはしたが今はもうすっかり慣れた。

「えー今日はむっちゃんドストライクぅな感じにしてきたんだけど」
「俺のドストライクぅは弥生だから心配すんな」

じゃあ明日はもっと狙ってくから覚悟してね、と血色の良い唇が微笑んだ。ちなみに、この台詞も毎日のように言っており所謂"むっちゃんドストライクぅ"が達成された事は見た限りない。艶やかな黒髪を揺らし、件の彼方琴代はふらりと"むっちゃん"、如月睦月の元を離れ今度は朝霧貴成の方に照準を定めたらしい。年頃の女の子のようにスカート丈を異様に短くする事なく、膝が半分見える程度の丁度良い丈のプリーツから伸びる程よく引き締まった脚が勅使河原幸音の前を通り過ぎる。背筋を伸ばし完璧なモデル顔負けのウォーキングを見せる背中を見送って、隣の黒織風が口を開いた。

「あの人、意味不明だ」
「不思議な方ですよね、掴み所がないと言いますか……」

自分と黒織風よりたった一つ年上であるだけなのに彼方琴代には何十年も歳が離れているような独特の存在感があった。容姿や話し方ではなく(寧ろ話し方に関しては一番若いというか現代ぽいというか俗っぽいというか)、纏う雰囲気であったり表情であったり。見方によって印象が大きく変わる人だった。

「あの人、彼岸花に入る前は唯の一般人だと聞いた」
「まぁ、それは」

忘れもしない初対面の時。幸音、風が来るまで薔薇隊唯一の女性隊員で所謂世話係、新人教育係として顔合わせをしたあの日。正直な感想を申し上げよう。ドン引きだ。

「彼方琴代、彼岸花のビジュアル担当です。今日から貴女の指導係?みたいな?取り敢えずシクヨロちゃん」
「……少しぶっ飛んでるが慣れる。気にすんな」

隊長に引き合わされたその人は、まさに美少女だった。完璧な配置の顔立ち、きめ細かい肌に計算され尽くした体型。同じ女性として尊敬しか抱けない。だったのだが。

「あの……彼方さんは学生なんですか?」
「ああ、セーラー服?需要が高いから着てるだけだよ。美少女だからねぇ」

自らの事を美少女と形容するのはまあ、置いておこう。それよりもセーラー服。薔薇隊、否、彼岸花の中でも最も奇抜な格好ではないかと思った。揃いの羽織以外服装の指定はないので悪くはないのだが。何故にセーラー服。需要が云々らしいが幸音には理解が出来なかった。

弐→←飼い猫【琴吹 爽;きなこ】



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(プロフ) - 終わりました (2019年2月24日 13時) (レス) id: 9b991eef88 (このIDを非表示/違反報告)
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きなこ(プロフ) - 終わりました。 (2018年9月26日 23時) (レス) id: 6b9c59579e (このIDを非表示/違反報告)
きなこ(プロフ) - 更新してきます。 (2018年9月26日 23時) (レス) id: 6b9c59579e (このIDを非表示/違反報告)
きなこ(プロフ) - 一度、終わります。 (2018年9月26日 18時) (レス) id: 6b9c59579e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:血塗られし彼岸花参加者 x他6人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年9月9日 18時

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