悲しい思い出【血塗られし彼岸花過去篇】【銀魂】 (ページ2)

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不道徳的少女の誕生【塩原怜南檸檬】ページ2

忘れたくて、でも忘れたくない夢を見た。

私と同じ目の色を持つ母と年の離れた兄。
そして陰陽師の父。

実家は神社で、人里離れたところにぽつりと
立った寂しいところだったが、優しい家族に
囲まれていたからなにも寂しくなかった。

母は不思議な人で、雨が降るといつも傘を
持たずに外へ出て、びっしょり濡れて帰ってきた。父も兄も母になにも言わなかった。
私もそれが普通だと思ってなにも言わなかった。

兄は５つ下の私といつも遊んでくれた。
何せ人里離れたところだったから、
そんなに遊び道具もないのだが、父がお土産に
買ってきてくれるおはじきや風車などを使って
私を楽しませてくれた。

父からはいつも墨の匂いがして、
私はその墨の匂いが好きだった。
墨の匂いがすると父が帰ってきた！と鳥居まで
走って父に抱きついていたのが懐かしい。

夢の内容はというと、あの日の夢だった。

夜中になにかが焼けるような臭いと、あまりの
暑さに目を覚ました。
慌てて同じ部屋で寝ていた兄と両親のもとへ
行くとすでに手遅れだった。
確か、最後にした会話は「おやすみ」。
本当に永遠の「おやすみ」になってしまった。

しかも焼けて死んだのではなかった。
他殺だ。と幼い私にもすぐにわかった。
その証拠に母の目には小刀が刺さっていた。

その無残な姿に兄は私の目を手で覆いかくし、
声を押し殺して泣いていた。
そのときの兄の涙の冷たさは一生忘れない。

兄は私の腕を掴み、神社から逃げたがそれも
あっけなく、兄は何人かの男に捕まった。
兄は自分が捕まった拍子に私を投げ飛ばし、
逃げろと叫んだ。
私が逃げるのをためらっていると兄はもう一度
逃げろと叫んだ。
あんなに大きな声を出す兄は初めて見た。

私はあてもないのに無我夢中で逃げ、
夜はそのまま明けた。
だいぶ遠くまで逃げたつもりだったけど、
当時たった5歳の幼子の遠く、は大人にとって
それほど遠くなかったらしく、しゃがみこむ
私に一人の男が声をかけてきた。

私は本能でその男が家を焼いた男だと悟った。
血生臭く、頰についた灰がそれを物語っていた。馬鹿な男だ。と私は従順なふりをして
持っていた護身用の小刀で男の腹を刺した。

まだ5歳の頃だった。