7 ページ7
｢いや、3回も偶然が続いたらさ、ちょっともう運命って感じでしょ｣
芳実さんに2年振りに彼女が出来たって。
篤人が嬉しそうに言っていた。
馴れ初めを聞いたら、ヨッシーは照れて、頬が少し赤くなる。
｢運命？｣
｢キモいよね、俺。でもさ、3度目に会った時にほんとにそう思ったんだよ｣
｢ふーん｣
｢あー、なんか馬鹿にしてる？｣
夜勤明けの午後に訪れた篤人の家で、夕食の仕度をしている同級生は、なんだか可愛らしくて、でも元々そんなキャラじゃなかったはず。
恋って、不思議。
聞けば、その彼女は随分年下で、この春社会人になったばかりだと言う。
｢…じゃ、22歳とか？｣
｢や、短大出ての幼稚園教諭だからまだハタチ｣
｢…｣
・・・ハタチ。
｢一回り下…？｣
｢ああ、まあ、そうかな｣
｢ヨッシー…｣
｢あ、なんか良からぬ事を想像しただろ｣
｢え… ｣
｢違うからな。その、そういう意味ではまだ、なんつうか、まだだから｣
そういう意味ではって・・・。
｢…あの子にとってはちゃんと付き合うのは俺が初めてだからさ｣
｢うん｣
カウンターを挟んで、キッチンのヨッシーとダイニングの私。
手伝う？って前は言われたけど、最近はもうそれはない。
料理については諦めてるのが伝わっている。
｢経験？を、さ、いい思い出にしてあげたいっていうか｣
だって、高野は初めての時の事、どんな思い出？ って、そんな事聞かれても答えませんけど。
｢大事にしてるのね｣
｢まあ、可愛くて仕方ないよ｣
・・・それだけ歳が離れてれば、そりゃあ可愛いでしょう、と思ったけど言わない。
｢やっぱり男の人は若い女の子がいいのよね｣
一瞬、しまったという顔をして、ヨッシーは苦笑い。
｢別にそういう訳じゃないって｣
｢説得力ゼロよ｣
｢…篤人さんはさ、高野の歳なんて気にしてないよ｣
｢逆に少し気にして欲しい位だけど｣
｢ん？｣
｢32ですからね…、色々考えるわ｣
ハタチの子には想像出来ないような感情がある。
｢…結婚、したらいいのに｣
｢篤人に言って？｣
篤人が帰ったら、これを温めればいいの？ と言って、その話は終わらせた。
｢俺は、篤人さんと高野も運命の出会いだと思ってるよ？｣
｢…そうかな｣
｢そうだろ。中々ないよ？ 外国で出会うなんて｣
｢…そうね、そうかもね｣
今でもはっきりと思い出せる。
秋の日の小さな診察室。
篤人が着ていたグレーのパーカー。
丸めた背中。
掠れた声。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 491人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「芸能人」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
馨子(プロフ) - かずさん» かずさん、初めまして。コメントありがとうございます。続き、書きます。もうしばらくお待ち下さいませ。 (2020年10月8日 21時) (
レス) id: 3d2bd1be2e (このIDを非表示/違反報告)
かず(プロフ) - たまたま見つけて初めから一気読みしてしまいました！続きをたのしみにしています。 (2020年8月30日 19時) (レス) id: 5b90d9c873 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - SARAさん» SARAさん、コメントありがとうございます。更新はします！ 中々時間が取れないので超超スロー更新とはなりますが、気長にお待ち下さると嬉しいです。これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2020年5月27日 15時) (レス) id: 3d2bd1be2e (このIDを非表示/違反報告)
SARA - たまたま見つけて読み始めたのですが、このお話大好きです！！もう更新はされないのでしょうか？続きを楽しみにしています！ (2020年5月27日 10時) (レス) id: 33418b16ef (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - みのりんさん» みのりんさん、コメントありがとうございます。久々の更新でしたのでドキドキしました。また、お会いしましょう。 (2020年4月25日 16時) (レス) id: 3d2bd1be2e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：馨子
| 作成日時：2018年8月25日 11時
