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フランツから5月に来日すると連絡を貰ったのは、篤人とそんな話をしたすぐ後だった。
私の為に時間を取ってくれると言う。
『アツトにも会いたいけど、どうだろう』
『話してみますね』
折角だから、お寿司でも会席でも、日本の何か美味しい物をと思ったら、まさかのお肉のリクエスト(笑)。
『コウベギュウ?とか、マツサカウシとか』
『判りました(笑)』
篤人に話したら、
「俺も日本の美味しいお肉好きですよ」
と笑っていた。
4年過ごしたドイツを離れる時に、フランツは私の今後のキャリアの事や、篤人との事を気に掛けてくれた。
『仕事は大丈夫です。日本でのポストはまあ、同期とほぼ同等のようですし、篤人とは、…別れましたから』
『…女の人は強いね』
『…そうかも知れません』
篤人と別れた事を知っているのに何故フランツは今回、篤人にも会いたいと私に言ってきたのだろう。
ヨリを戻した事は言っていない。
篤人が連絡を取っている?
なら、直接本人に来日を伝えるだろう。
朝の申し送り後、医局のデスクでカルテの入力をしていたら、ディスプレイの右下にメール受信のメッセージが表示された。
外科の西原先生に5人目のお子さんが誕生、内科の堺先生がご結婚、というおめでたい内容だった。
西原先生は、少子化問題に貢献してると忘年会の時に仰っていた。
千葉大のビッグダディを目指すんでしょうとからかわれていた。
堺先生は、同期だ。
だけど私は、在学中も研修医になってからも、誰かとつるんだり、プライベートで出掛けたりという事をしなかったから、本当にただの同期。
もちろん、必要なコミュニケーションは取ったけれど、それ以上はなかった。
それにしても、
“結婚相手は研修医のうちに見つけておけ”
医局でよく言われる事。
その後は忙しくて無理だから。
いや、研修中だって相当忙しいけど?
堺先生はどうだったのかしら。
32歳って、こどもが欲しいと思ったら、女にとってはのんびりしていられない。
私は。
こどもは、出来れば欲しい。
だから結婚がしたいのか。
そもそもまともに恋愛も出来ていないのではないか。
仕事だってまだ一人前とは言えない。
診断に自信が持てなくて、先輩に相談したり、検査結果に一喜一憂したり。
ドイツに4年も行ってたんだからと、いう声が聞こえてくる度に増す焦燥感。
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馨子(プロフ) - かずさん» かずさん、初めまして。コメントありがとうございます。続き、書きます。もうしばらくお待ち下さいませ。 (2020年10月8日 21時) (レス) id: 3d2bd1be2e (このIDを非表示/違反報告)
かず(プロフ) - たまたま見つけて初めから一気読みしてしまいました!続きをたのしみにしています。 (2020年8月30日 19時) (レス) id: 5b90d9c873 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - SARAさん» SARAさん、コメントありがとうございます。更新はします! 中々時間が取れないので超超スロー更新とはなりますが、気長にお待ち下さると嬉しいです。これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2020年5月27日 15時) (レス) id: 3d2bd1be2e (このIDを非表示/違反報告)
SARA - たまたま見つけて読み始めたのですが、このお話大好きです!!もう更新はされないのでしょうか?続きを楽しみにしています! (2020年5月27日 10時) (レス) id: 33418b16ef (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - みのりんさん» みのりんさん、コメントありがとうございます。久々の更新でしたのでドキドキしました。また、お会いしましょう。 (2020年4月25日 16時) (レス) id: 3d2bd1be2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:馨子 | 作成日時:2018年8月25日 11時