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潮来のインターチェンジで高速を降りた。
鹿嶋へのいつもの道とは別の方向へ向かう。
ナビの通りに進むと、まもなく目的地が見えてきた。
白い外壁。
それもまだあまり汚れていない。
新しい病院だからと仰っていた言葉を思い出す。
午前の受付は終わっている時間なので、駐車場は空いていた。
総合案内と書かれたカウンターで、中村先生を呼んでいただく。
小走りでやってきた姿は、相変わらずスマート。
“ 医者が太っていては駄目です。健康の為にも、信頼性の為にも”
研修医時代にストレスで太ってしまった同期が、中村先生に言われた言葉。
“私の個人的見解ですが、 医者が肥満では減量が必要な患者にアドバイス出来ない。何より自分が病気になっては論外”
「何を笑ってるの?」
「いえ、昔、先生が仰っていた事を思い出しまして。失礼致しました」
それはなんだという表情で、
「まあ、よく来てくれたね」
と頭を下げられる。
「どのような病院かを判らないのでは、お受けする事もお断りする事も出来ませんので」
「確かに(笑)」
院内を案内していただいた後、通された応接室には、院長と事務長がいらして、少し緊張した。
でも、お二人共気さくな雰囲気で、病院の概要を話して下さる。
「中村先生から小児科の件は伺っています。内科医としての経験を積んだ今なら、もう一度向き合えるのではないですか?」
「どうでしょう。医師としても、人間としてもまだまだ未熟です」
「まあ、それはね、そういう気持ちは大事ですね」
事務長が、このご時世ではセクハラと捉えられると困るのですがと前置きをされてから私に結婚の事を尋ねた。
「そういうご予定があるのなら、伺っておいた方がいいと思うのですが?」
「…具体的に時期が決まっている訳ではありませんが…」
中村先生が少しニヤニヤしながら、
「結婚されても通勤には便利ですよ、鹿島ですから」
と、とんでもない事を仰る。
「中村先生!」
「鹿島? と言うと?」
「いえ、あの、相手の方が鹿島に住んでらして…」
「ああそうですか! これはもううちともご縁があるとしか思えませんね(笑)」
このお話のことはまだ話せてはいませんが、とは言えない雰囲気になってしまった。
「是非前向きに検討していただきたい」
「はい、よく考えて、返事をさせていただきます」
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馨子(プロフ) - かずさん» かずさん、初めまして。コメントありがとうございます。続き、書きます。もうしばらくお待ち下さいませ。 (2020年10月8日 21時) (レス) id: 3d2bd1be2e (このIDを非表示/違反報告)
かず(プロフ) - たまたま見つけて初めから一気読みしてしまいました!続きをたのしみにしています。 (2020年8月30日 19時) (レス) id: 5b90d9c873 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - SARAさん» SARAさん、コメントありがとうございます。更新はします! 中々時間が取れないので超超スロー更新とはなりますが、気長にお待ち下さると嬉しいです。これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2020年5月27日 15時) (レス) id: 3d2bd1be2e (このIDを非表示/違反報告)
SARA - たまたま見つけて読み始めたのですが、このお話大好きです!!もう更新はされないのでしょうか?続きを楽しみにしています! (2020年5月27日 10時) (レス) id: 33418b16ef (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - みのりんさん» みのりんさん、コメントありがとうございます。久々の更新でしたのでドキドキしました。また、お会いしましょう。 (2020年4月25日 16時) (レス) id: 3d2bd1be2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:馨子 | 作成日時:2018年8月25日 11時