I Need To Be In Love

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篤人のマンションは来客用駐車場がひとつしかなくて、空いていない時もある。
だから篤人がすぐ近くに月極めの駐車場を借りてくれた。
そこはヨッシーも借りている所で、その日訪れると彼の黒い車も停まっていた。
自分が車を持っても、私はメーカーや車種がよく判らない。
ヨッシーの車は私のと似ているけど多分違う。
佐野先生は、走り去る所だけで篤人の車を言い当てた。
ただ、それが当たっていたのかは残念ながら私には判らないという・・・。
興味がないと言えばそれまでだが。

そんな事を考えながら、駐車場を出て角を曲がる。

｢失礼ですが、高野Aさんでいらっしゃいますよね？｣

エントランスに入ろうとした所で突然声を掛けられて、思わず振り向いた。

｢わたくし、こういう者です｣

差し出された名刺に目を落とすと、出版社の名前が書かれている。

｢ここって、内田さんのマンションですよね？｣

・・・え。

｢よくいらしてませんか？ なので、僕、彼女さんなのかなーなんて｣

ひどく慇懃な感じが、逆に馬鹿にされた様な雰囲気で、でも今考えなくてはいけないのはそんな事ではない。

｢こないだはこちらでお食事？ されてましたし｣

差し出された写真には。
・・・篤人と私が写っていた。

｢タクシーでどちらかに向われましたけど、翌朝は内田さんの車でしたね？｣

失礼しますとだけ告げて、踵を返そうとしたら、ちょうどヨッシーが出て来た。

｢どうしたの？｣

ただならぬ空気を感じ取ってくれたのか。

｢や、ちょっとお話を伺ってまして｣
｢話？｣
｢ええ、あの、内田さんの｣
｢内田は私ですが、どのようなご要件で？｣
｢は？｣
｢え？｣




｢まだ見てるね｣
｢うん…｣
｢ポカン顔だ｣

ヨッシーの車の助手席で、そのポカン顔の記者の目の前を通り過ぎる。

｢取りあえず今日は帰った方がいいでしょ？ このまま送るよ｣
｢うん…｣

高野の車は何とかするからと言われて、キーを預けようとバッグの中に目を落とすと、スマホのライトが点滅して着信を知らせていた。
篤人からの留守電を聞く。

｢篤人さん？｣
｢うん、ちょっと話があるって、…多分さっきの人の事だね｣
｢とにかく今日は帰るって連絡してみて？ あとさっきの事も｣

電話をかけたが篤人は出なかった。
こんな時にすれ違うって、不安になる。
声を聴ければ少しは気持ちが落ち着いたのに。

用件だけを留守電に入れて電話を切った。

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