愛されメイドの備忘録 (ページ28)

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『やっぱりメイドちゃんの珈琲は美味しいわ〜』

「ありがと！」

空になったコップに注ごうとすると、丸山くんの冷たく光の無くなった瞳が私の後ろへと向けられていた。

緩く口角を上げる丸山くんに私の背筋に寒気が走る。

『どしたん…？あ…お手手冷たなっとるやん！』

「え…そ、そうかな？」

私の手を掴むと丸山くんは勢い良く立ち上がり私の隣へと座り直した。

『僕が温めたるな？』

私の両手を大きな手の中に包むと丸山くんはニコニコと微笑み続ける。

『てかさっきからな〜に？皆仕事に集中せんと…もしかしてメイドちゃんに惚れとんの？』

〔い…いや！お似合いだなぁって思いまして…〕

『ほんまに？！嬉しいなぁ？』

「う…うん！」

笑顔が引き攣る皆さんに丸山くんは変わらず満面の笑みを浮かべていた。

『あ、そろそろ定時やし帰ろか〜』

丸山くんは席を立つと自分のデスクへと戻っていく。

私も帰る支度をしようと立ち上がると珈琲を褒めてくれた先程の男性が私の元に近づいてきた。

〔あの…多分なんだけどね〕

「はい…」

〔丸山さん…冗談なんか言わないと思うんだ〕

「え…？」

〔いつもメイドさんのお話沢山してるし…愛されてるなぁと思ってて。でも…毎回寂しそうな瞳で話されてるから〕

小さな声で私に言うと男性は足早に離れていった。

『メイドちゃん…？』

「あ…帰りましょ！」

荷物を持って丸山くんと外に出ると暖かな手に私の手が包まれる。

『どうやった？僕の仕事姿』

「とてもかっこよかったよ？真剣な姿が」

『なら良かった〜メイドちゃんに僕の仕事場に来て欲しかったからさぁ』

嬉しそうに笑う丸山くんが皆に寂しそうな表情をして私の話をするなんて、想像もできなかった。