デート ・黒紫 ページ38
浮いてる。
いや…使用人と主人だから当たり前か。
大きなショッピングモールに村上さんの高級車で横山さんと共にお買い物。車を降りて2人の後ろ姿を見ながら私はそんなことを思った。
車でさえ目立つのに降りてきた2人の姿も結構目立つ。
社長ってこんなオーラが出るのか…。
『おい、おい…A！』
「はい…！ごめんなさい！」
『何をぼーっとしとんねん。はよ行くで！』
『てか、なんで村上も居んの？』
白いタートルネックにロングコート、黒ハットに黒縁メガネ。スーツ姿とは違いお洒落な着こなしでポケットに手を入れながら不機嫌な顔をした横山さんは、今更になって文句を言い始める。
『俺が運転するし、村上はこういうの興味無いやん』
『なんやねんな！せっかくAが誘ってくれたんやから仕事休んででも行くわな！』
「本当に無理言ってごめんなさい…横山さんと村上さんの休日が重なってなくて…」
『全然ええがな！まぁ…なんで俺ら呼ばれたんかはよう分からんけどな笑』
緩やかなニットに紺色のロングコート。お風呂入るギリギリまでスーツの村上さんの私服を見れるのは結構レアな事だった。
「少し…お2人とお買い物をしたくて」
『なんや金のある2人呼んで何買うんや笑』
「違います！本当に今日は何も要りませんから…！」
『あんな遠慮せんでもええんやけどな…』
『お前はあげすぎなんだろ』
2人の間を抜けて歩き出すと後ろからゆっくりと着いてくる。
モールの中に入ると事前に行きたかったお店を地図で確認する。
「4階か…」
お店を見つけると2人とともにエスカレーターへ向かおうとするが、後ろに2人の姿がない。
「え…？」
辺りを見回すと、洋服屋の前で何やら服を選んでいた。
「嫌な予感、、」
『なぁ絶対こっちやろ』
『あいつは黒か白』
『なんやそんなんメイド服と変わらへんやないか』
『シンプルが1番。チェックとか柄付きのでええやろ』
『いや、明るい色がええ』
見た事のある有名ブランドの前で言い合いを始めていた2人に近寄ると、やはり私の服。
「あの！本当に今日は…」
『ほら今日やって可愛らしい水色やないか！』
『別に似合わへんとは言うてない』
「ふ…2人とも！」
『すまんすまん笑似合うと思ってな』
差し出された薄紫色のニットのワンピース。
可愛いけど…今日は違う！
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作者名：夜 | 作成日時：2021年11月10日 20時
