愛されメイドの備忘録〈２〉 (ページ50)

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〔そのような事は…〕

『Aにお前のせいでもしもの事があった場合分かってんな？』

昔からずっとそうや。

俺と視線を交わした人間は呪われたように身体を硬直させてその後脱力したようにその場に倒れ込む。

〔ノワール様の命令は絶対でございます〕

『分かってんならええ』

ゆっくり手を離せば男は地面へと座り込んでいった。

気にせず俺はそのまま下へと降りて行く。

『あれ？横山くん屋上でお仕事？』

『ああ…単純過ぎて阿呆な男の相手や』

『ボス直々にお疲れ様〜』

大きな欠伸をしながら手を挙げる大倉に俺は眼帯を外しながら近づいて行った。

『周りの女の始末は順調か？』

『もちろん。デートの時は散々に荒らされちゃったからさぁ……まとめてゴミ箱だよな』

『はぁ…まさか女の中に"俺ら"の事を知ってる奴が居るとはな』

『ほんまに！びっくりしたわぁ…すぐに横山くんに報告したけど、噂話をめっちゃ詳しく知ってただけやったな』

『怪しいぐらいに詳しかったけどな』

『噂の出処も聞けないまま死んでもうたからな』

大倉は俺の肩に手を置くと口角を緩めたまま耳元に顔を近づけてきた。

『Aは優しくされると喜ぶ。俺は命令通り魅了しとる最中やから……お任せをノワール様』

気にすることもなく俺は部屋に戻ると何事も無かったかのように、一糸まとわぬ姿でベッドの中へと戻った。

『俺はAの命令しか聞かへんよ…』

黒髪を撫でると俺は瞳を閉じた。

いつ自分が殺されるかは分からない。

ただ弾薬の匂いがしたら覚悟をした方がいい。

遠くから命を狙い続ける冷酷非情なスナイパーの姿は誰も知らない。

何が言いたいかと言うと…彼に狙われた時点で死ぬ運命ということ。

ノワールと呼ばれ、仕事は完璧にこなすことを前提に彼女の為に働く暗殺者は俺。