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〔3分40秒…素晴らしいです〕
『一般人は抵抗という行動を知らんからな。つまらへんわ』
醜い血で汚れた鉄扇をハンカチで拭き取ると胸ポケットにしまった。
〔また大きな組織での依頼がきておりますから…それまでは準備運動ということで〕
『報酬は?』
〔用意しておきましたよ…特製のティーパック〕
『素直に飲んでくれるからな。重宝しとるよ』
〔睡眠薬の効き目を書いてありますからお間違い無いように…それと、噂の件ですが〕
『なんか分かったんか?』
〔メイド様は…ノワール様に身を許しているようです〕
『やっぱりそうか…ほなお疲れさん』
俺はまた屋敷に帰ってくると風呂上がりのヤスに出くわした。
『相変わらず綺麗に帰ってくるねぇ…』
『醜い血は拭き取り綺麗にしてから入るのがマナーやろ』
『俺には分からへんなぁ…それに、自分の部屋に閉じ込めてる間にお仕事なんてよう考えるわ』
『これからこの方法で行うつもりや』
上着を脱いで手に持つとヤスを通り過ぎて部屋へと向かう。
『そうだ…ヴィヨレく〜ん。今日もまた脱落者がおったらしいで』
『そうか』
『舞うように人を殺めるなんて…残酷だよ』
ヤスは馬鹿にしたようにスキップしながら部屋へと帰っていった。
『残酷…?綺麗に決まっとるやろ』
鍵を開けてまるで死んでいるかのように眠っているメイドを覗き込む。
『誰よりも美しく。
お前さんの隣には綺麗な姿で居りたいんや』
触れようとしたが、手袋が少しだけ赤く染まっていたのに気づき、手を止めると俺は机の前に向かった。
この手で殺めた男が写る資料を手に取ると、今日の日付と紫色のペンで二重丸を施す。
『風呂の帰りに渡しに行くか』
これが俺の本職。
鉄扇で演舞する姿は美しい。
見惚れている間に皆殺されていく。
ヴィヨレと呼ばれる綺麗好きの暗殺者は
この俺しか居ない。
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作者名:夜 | 作成日時:2022年2月8日 22時