愛されメイドの備忘録〈２〉 (ページ30)

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✿ ページ30

すると飛ぶように猛ダッシュで走ってきた丸山くん。

『危な〜い！』

「え？」

『村上くん？！』

『なんやねんうるさいな…何ともないやろ？そんな阿呆みたいなことせえへんわ』

『はぁ…間に合ってほんまに良かったわ…』

『丸のおかげやわ』

「な…なんの事ですか？」

『メイドちゃん…あんまり僕らを困らせへんでな？』

「うん…」

『じゃあ…僕は仕事行ってきま〜す』

『いってら〜』

大きく手を振ってまた走って去って行った丸山くんを見送ると、村上さんは私の腰に腕を回した。

『ちょっと話ええか？』

「はい」

そのまま紫のドアをくぐると綺麗な革製のソファに座らされた。

机には仕事の資料なのかファイルが積み重なっており、難しそうな本が図書館のように本棚に並べられていた。

『折角の休日を休めてないお前さんに…ある提案をしたいんや』

「提案…ですか？」

私の隣に腰掛けるとゆっくりと私の方へと視線を向けた。

『休日も俺らの傍に居るっていうのはどうや』

「皆さんのそばに…」

『メイドと休みの日が被ってる奴らの中から1人を選び、その日はそいつの言うことしか聞いたらあかん』

「1人だけ…ですか？」

『そうや。もちろん休日やから命令なんてほぼせえへん。でもメイド的にも緊張はどこかにある事やし…隠れて仕事しようと思わんくなると思ってな』

「すみません…」

『ええねんええねん。二度とそんな事させへんようにも、この提案しとるんやから』

そう言って私の手の上に重なった村上さんの手は異様に冷たかった。

『試しに今日は俺と過ごしてみるか？』

「村上さんと？」

『2人きりは嫌か？

嘘なんか…つけへんくなってまうからなぁ…

メイドは嫌よな』

低い声で部屋の中に響いた村上さんの声に手を引っ込めようとしたが、力強く握られ捕まってしまった。

『猫はツンデレで反抗的。懐くのに時間がかかる』

「な…なんですか？」

『俺から逃げようとすんねや…メイドは』

「逃げようだなんて…思ってません！」

『なら…俺と過ごしてくれるな？』

「はい…もちろんです」

私は頭を縦に振ると優しい笑みを浮かべ村上さんは私の頬を撫でた。