黒色 ページ22
昔から人の上に立ち続けてしっかりとしていなければと必死に頑張ってきた。
どんなに辛くても誰にも頼らず意地を張って走り続けてきた。
けれど、どれだけ社員からの信頼を得ても、お金を手に入れても何も感じず嬉しくもなかった。
楽しくもないパーティーに呼ばれては金目当ての女に口説かれるだけ。
やがて俺は女嫌いになり、会社では段々と秘書以外と話さなくなっていった。
そんな俺が出会ったのは、俺に何も求めずただそばにいてくれる優しさの塊のあいつだった。
きつい香水の匂いを消すために風呂に入れば、部屋に戻りベットへと沈み込む。
疲れているはずなのに眠りにはつけない。
俺は枕元から瓶を取り出すと蓋を開けて2錠取り出した。
いつからか俺はこいつがないと眠ることができなくなっていた。
『水ないやん…』
いつもメイドが毎日取り替えてくれるはずの水が入っているポットが空になっていた。
『はぁ…』
ため息が漏れたのと同時に叩かれたドア。
「失礼します!間に合いました…?!」
『は…?』
「あぁ!だめですよ飲んだら!これを飲んでください!」
メイドは慌てて俺の元に駆け寄ってくると、持っていたカップに温かそうな牛乳を注いだ。
最後に蜂蜜を付け加えると俺の前に差し出す。
「ホットミルクと蜂蜜には安眠効果や疲労回復の効果があるんですよ?睡眠薬よりも体にいいですし…是非!」
薬を瓶に戻せば俺はカップを受け取った。
一口飲むだけで体が暖かくなりリラックス出来た。
「実はお昼に部屋を掃除してるときに空の瓶を見つけてしまって…あえて水を交換しなかったんです」
『……』
「迷惑かもしれないと思ったんですけど…主人の健康のことも気遣うのがメイドの仕事なので、ご提案だけでもさせていただこうと来ました!」
『……美味い』
「本当ですか!?じゃあ今日は安眠ですね」
メイドはそう言うとカーテンをしっかり閉めると枕元に何か機械を置いた。
「アロマの匂いもよく寝れるみたいなので是非」
『アロマ…』
「ではおやすみなさい!」
俺から空になったカップを取り上げるとメイドは笑顔で出ていった。
『なんなん…あいつ』
ベットに横になると自然と瞼が閉じていく。
メイドのおかげなのか俺は薬を飲まなくてもしっかりと眠ることができた。
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作者名:夜 | 作成日時:2022年2月8日 22時