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『入んで』
『そこ!絶対に踏むな…』
『びっくりした…こんなドアぎりぎりに絵を置くなや』
『ほんまはメイド以外立ち入り禁止やねんからな』
綺麗な青色のドアの向こうは色鮮やかな世界が広がっているヤスの部屋。
沢山置いてある絵を物色するのが俺の楽しみでもあった。
『なんであんなことしてるん?』
『なんやいきなり』
『メイドにするための事前練習?』
『何を…』
ヤスは俺の方へ体の向きを変えると、絵を描きながら話し始める。
『殺人鬼は人を殺す前に猫や犬とかで練習してから本番の人に手を出すんやねんて。
だから殺されてる動物の死体が見つかった場所では殺人事件が起こるって噂が出んねん』
『それがどうしたんや』
『それは殺人だけやない。深く依存した嫉妬や妬み、束縛も行動に出る。
俺は絵を描くし、丸は監視しまくってるし、大倉は洋服や匂いまでも自分と一緒にしたがる。
じゃあ村上くんは?』
『そんなん分からへんがな』
『自分の部屋に閉じ込めておきたい。
手足を縛り付けて不自由にさせて…まるでペットのようにお世話してあげたいんやろ?』
ヤスの言葉に絵を漁る俺の手が急に止まった。
『だから俺の絵を欲しがるようになった。少しでも自分の部屋にメイドを…』
『やめてくれへんかな。いくらヤスでも怒んで?』
『分かった……お詫びにその絵タダであげるよ』
『ほんまか!?これ丁度買おう思ってたんや』
『だと思ったわ…』
俺が抱えていた絵を指差しながらヤスは苦笑してまた絵を描き進め始めた。
『やっぱりヤスの絵はええなぁ…』
早速部屋に帰ればもうすでに壁に何枚か並んでるヤスの絵の隣に飾った。
今日の絵はメイドが床に座り込み、首に付けられた首輪から伸びる鎖がベットに括り付けられていた。
『事前練習…んなわけあらへんやろ。あんな聞き分けの悪い奴らが練習になるかいな』
俺はしばらく絵を眺めたあと倉庫へと向かう途中、中庭で楽しそうにヨコと会話していたメイドを見かけた。
『俺はメイドが笑っとってくれればそれでええ』
それだけで十分。
メイドの為なら醜い仕事でも何でもする覚悟。
メイドが汚れるよりもずっとマシやった。
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作者名:夜 | 作成日時:2022年2月8日 22時