王子様５【ツルネ】 (ページ10)

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210話ページ10

近寄ってきそうな輩をシャットダウンするように2人だけの空間を作り出すA。

近づきたい者達の目的は藤原だけではなく、ぶっちゃけA目的な方が多いのだが彼女にとってはそんなの関係ない。

藤原目当てのやつだけ駆除できれば良い、と考えているので自分に送られる熱視線にはビクともしなかった。

『愁、“貴公子様”だってさ！すごくピッタリだ。』

藤原「ふふっ、君が俺の王子様なのに変わりないのだから、あまり興味無いな。」

『はは、愁ならそう言うと思った！
けどさ、なんだか異名？まで似てるの嬉しいなぁ』

藤原「うん、俺もだよ」

王子と貴公子

二つとも気品があり、容姿・風貌などどこを取りあげても美しく凛々しい、という意味。

自分よりも高い位置にある肩に己の頭を乗せ、寄りかかるように藤原は彼女の温もりを感じた。

そしてそんな彼の頭に自分も傾けて寄り添う形のAは、この時が永遠に続けば良いと考えた。

『…私は“桐先の王子”の前に“愁の王子様”、だからね』

藤原「ん？」

『ふふ、ほら！愁そろそろだよ！』

試合経過や手伝い等で、桐先一行は陣地に誰一人としていない。

そのため移動しないでルーティンできる2人は向かい合ってそっと頬に手を当て軽く撫でた。

・

結果から言おう。

審判主任「団体、個人ともに優勝おめでとう。全国での活躍を大いに期待しているよ。」

『はい、ありがとうございます。』

個人戦優勝を果たしたのはやはりAであった。

周りを寄せ付けない目を見張る程の圧巻な射。

堂々とした佇まいから繰り出される力強くと雪のように儚い美しい一筋の矢は、観るものを呑み込むようにして魅了させた。

藤原「A」

『ん～？』

表彰式も無事終わり、全ての大会日程が完了した桐先一行は片付けや帰る準備を始めていた。

出場選手は自分の支度を整えていて、Aもその最中だったのだが愛しい声に名を呼ばれ、直ぐに彼へと振り返った。