スターレベルテスト-10 ページ11
Side.K-OSM
正直、彼女がITZYの候補生だったことは知っていた。
今はWAKEONE所属の練習生だが、僕たちがTO1(TOO)としてデビューした時にも色々噂されていたのだ。
“怪我さえなければ、あの子も今頃ITZYのメンバーだったのに”
本人たちのいない所で嫌でも聞こえてくる、顔も知らない練習生の噂話。
それを聞いたメンバーが、そんな不運な子がいるんだね、と同情していたのを思い出す。
顔も名前も知らない僕たちに同情されるのは本人の気持ち的にどうかと思うし、反対に僕も、顔も名前も知らない練習生に勝手に同情するのはどうかと思っていた。
その子は今どこで何をしているのだろうか。きっと怪我はもう完治しているけど、まだ練習生なのだろうか。
もしかしたら、怪我をきっかけに退所して、普通の一般人として生きているのだろうか。
もし自分が怪我のせいでデビューが白紙になったら、そう考えただけで酷く恐ろしく、こんな小さなグループでもデビューできただけで有難いんだな、と思えたことを覚えている。
結局僕たちはグループを脱退して、事務所所属の練習生に戻った訳だけど。
僕たちが脱退する1年くらい前、あのJYPから移籍してきた練習生がいると事務所内でも凄く噂になっていて、所属している僕が言うのも何ではあるが、あんな大きな事務所からこんな変な事務所に移籍してくるなんて変な人だな、と思っていた。
まぁ、大手事務所の練習生だからと言ってデビューが保障されている訳でもないし、大手事務所から他事務所へ移籍する人は他にも沢山いるわけだが。
デビュー組と練習生組とではレッスンも被らないし、練習室も別々なのであまり話す機会はなかったのだが、僕とウンギが前のグループを脱退して練習生へ戻った6月、ようやく彼女とちゃんと話すことができた。
それまでは会社内でバッタリ会った時に軽く挨拶をするとか、その程度の仲だったのだ。
ある日僕とウンギが練習室へ行くと先客がいるようで音楽が流れていたのだが、他の物音が全く聞こえない。
踊っているなら足音が聞こえるはずだし、休憩をしているとしてもそれなりに物音はするはずなのだ。
不思議に思った僕とウンギは顔を合わせ、中を覗き見ると仰向けで寝ている女の子が一人。
休憩中なのかと思ったが、銅像みたいに全然動かないし、寝てる?それともまさか倒れた?不安になって練習室へ入ると、扉が開く音に反応した彼女が漸く動いた。
良かった、倒れたんじゃないみたい。
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作者名:りらちゃん | 作成日時:2023年4月24日 22時