虎と兎38「異常」 ページ40
〜Aside〜
雀「あ、こっちか。ごめんね敦君」
苦笑しながら今度は本当の扉から出ていくお兄ちゃんの後を、二人で追いかける
***
探偵社から随分と歩いた。お兄ちゃんが足を止めたのは、建物など無くコンクリートの床と空き地ばかりの場所だった
敦君は家など無いこの場所に辿り着いた事を疑問に思っている様な顔をする
私もここが何処か分からない
雀「……お疲れ様二人とも。ここでいいかな」
そう言ってお兄ちゃんはゆっくり此方を振り返った
何故だか笑顔を絶やさないお兄ちゃんが、不気味に見えてきてしまう。恐怖を感じてしまう
A「お兄…ちゃ…?」
嫌な予感と不安で声が震える。そんな私をお兄ちゃんは笑顔で顔を歪めながら可笑しな事を言い出した
雀「……怯える顔も可愛いよA。やっぱりAは僕の救いだ。癒しだ。こんなに愛らしくて僕の心を満たしてくれる妹がいるなんて……僕は世界一幸せな兄だなぁ。………普通の暮らしができていたら、ね」
笑顔だったお兄ちゃんは最後の一言で酷く冷たく私達を見下ろした
怯える私にお兄ちゃんは戸惑いながら、″怖がらないで″と私の頭を撫でた
雀「Aを怒ってるんじゃないんだ。悪いのは皆、あいつだ。あの男だ。僕の母さんもAの母さんも、あいつのせいで死んだんだ」
「あの男」とは、お兄ちゃんの父親のこと
雀「だから、事故とはいえ殺せて良かったと思ってる。これで…これでAと二人きりだ。僕の愛しい妹は僕だけのものだ。母さん…Aの母親も好きだったけど、Aが母さんになついてることが恨めしかった」
私の肩を掴みながら淡々と話続けるお兄ちゃんについていけない。お兄ちゃんが私の事を大事にしてくれるのは知ってたけど、ここまで強烈だなんて思ってなかった
雀「……Aはね、僕の母さんにそっくりだったんだ。天使のようだ。僕の心を癒してくれて…あの男という邪悪な存在に、いつも汚されてた母さんに。
僕は母さんを守れなかったんだ……だから、今度はAを守らなきゃって、Aは僕がいなきゃ生きていけないくらいに、駄目な子にしてあげようと思ったんだ」
可笑しかった。この状況がなのか、お兄ちゃんがなのか、それとも私なのか……分からなかったけど、兎に角ここは異常だった。異端だった
雀「…手紙を残して家を開けただろう?あれはすぐ帰ってくるつもりだった。Aと永遠に二人で暮らすための準備をするだけだったんだ」
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果汁ジノ%(プロフ) - もちさん» ありがとうございます!べた褒め……めちゃくちゃ嬉しいです!新作の方も宜しくお願いしますね!( ´ー`) (2019年2月12日 17時) (レス) id: e1e76f0140 (このIDを非表示/違反報告)
もち - 初コメ失礼します。果汁ジノ%さんの作品とても好きです!このシリーズ最初から読んでいて、物語の設定や進め方がとても素晴らしいと思いました!イラストも上手で尊敬します!これからも頑張って下さい!! (2019年2月12日 15時) (レス) id: 41bd20641c (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 果汁ジノ%さん» (。・_・。)ノ (2019年2月11日 20時) (レス) id: 5016550d2e (このIDを非表示/違反報告)
果汁ジノ%(プロフ) - りんさん» ありがとうございます!黒の時代の話はすぐに終わると思うので、続編までの息休め程度に思っておいてくださいね! (2019年2月11日 19時) (レス) id: e1e76f0140 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 次の作品楽しみにしてます (2019年2月11日 18時) (レス) id: 5016550d2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:果汁ジノ% | 作成日時:2018年9月8日 7時