虎と兎15「兄の姿」 ページ17
〜Aside〜
『そうか……お前の忌々しい能力か!だがなぁ?それもお前が死んだら解除されるんだろ?だったら……』
男は兄の身体に入った状態で、躊躇する事なく兄の頸動脈を掻き切った
辺りは何も存在しないかの如く静寂だった
目の前に倒れる血だらけの兄の身体
その身体を呆然としながら見つめる男の身体
結論から言うと、男の考えは失敗に終わった
精神が入れ替わった状態で兄の身体が死しても、男の精神が体に戻ることはなかった
男の云う通り、兄の異能は一旦解除され、男の身体から兄の精神は弾き出され、兄は身体に戻ったのだけど……
兄が憑依から抜けた男の身体は動かなかった
兄曰く、兄の身体で死んだ時、その身体にいる男の精神は消え去ったのかもしれないらしい
兄の憑依は死人に入り込むことも可能らしい。大方その原理で兄の身体に戻ったのだろう
A『お兄ちゃん……』
『…大丈夫だ。あの悪魔のような父……男は消えた。Aは安心して良いんだ』
兄はそう云って笑いかけてくれた
けれど次の日になると、もう動かない男の身体も兄の姿もいなくなっていた
血の跡さえ残っていなく、まるで何もかもがなかったようだった
そこから幾日が経っただろうか、分からないけれど……
2度と兄が帰ってくることはなかった
私は兄を探しに外へ出たかったけれど、家でただじっとしていた
机の上に、兄からの置き手紙があった
″A。僕はここにいられない。Aに迷惑がかかるような事は絶対にない。安心してほしい
ただ、僕と約束してくれ。絶対に、外に出てはいけないよ。食料やお金の事を心配するかもしれないけど、問題はない。
Aはただ、食料庫にある食べ物や冷蔵庫の料理を食べて、いつも通り風呂を沸かして、僕が買った服を着て過ごすんだ
僕が来るまで、この約束を守ってほしい″
そう綴られていた
私は外の世界へ出る必要も勇気もなかったし、何より″約束″と綴られてしまうと、どうしてもその約束を破る様な気がしてならなかった
それから幾月、幾年が過ぎ、私の異能が暴走を始めた
最初の頃は、丸くてくっきりと映る、美しい満月の夜だけだった
人を殺めている事にも気づかずに、ただ夜の間の記憶がないだけだったけど……
ニュースで【人狩りウサギ】の話題を聞き、それが私だときづいてしまった
そして日を重ねるごとに、暴走する日々が増え、今では月夜には暴走するようになってしまった
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果汁ジノ%(プロフ) - もちさん» ありがとうございます!べた褒め……めちゃくちゃ嬉しいです!新作の方も宜しくお願いしますね!( ´ー`) (2019年2月12日 17時) (レス) id: e1e76f0140 (このIDを非表示/違反報告)
もち - 初コメ失礼します。果汁ジノ%さんの作品とても好きです!このシリーズ最初から読んでいて、物語の設定や進め方がとても素晴らしいと思いました!イラストも上手で尊敬します!これからも頑張って下さい!! (2019年2月12日 15時) (レス) id: 41bd20641c (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 果汁ジノ%さん» (。・_・。)ノ (2019年2月11日 20時) (レス) id: 5016550d2e (このIDを非表示/違反報告)
果汁ジノ%(プロフ) - りんさん» ありがとうございます!黒の時代の話はすぐに終わると思うので、続編までの息休め程度に思っておいてくださいね! (2019年2月11日 19時) (レス) id: e1e76f0140 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 次の作品楽しみにしてます (2019年2月11日 18時) (レス) id: 5016550d2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:果汁ジノ% | 作成日時:2018年9月8日 7時