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「・・・そうか」
「ごめん・・・。恋人がどうとか、好きとか嫌いとかじゃなくて、ただの友達でいたい」
友達でいたかった。今の俺には早過ぎて分からない事だから、それが分かるようになるまでは、友達でいたいと思った
「分かった。君がそれを望むのなら友達でいよう」
「ほ、本当?」
「勿論だ。好きな人には無理をしてほしくなからな」
そう言った秀一は笑って、俺の額にキスをした。流れるような自然な動作で、一瞬の事だった。恥ずかしさは段々と溢れて来た
「ばばば、バカッ」
「はは、バカで構わんよ」
額を押さえて怒っても秀一は笑ってそう言っただけだった
「ところで、安室くんにはもう返事をしたのか?」
「え、何で知って・・・」
「沖矢から話は聞いているし、毎日ポアロの前で立ち止まっていたら分かるさ」
「なるほど」
何がなるほどなのかは分からないが、適当に答えておいた
「どうなんだ?」
「伝えてないよ。勇気が出なくて」
「という事は安室くんにも俺と同じ返事を?」
「そのつもり」
透くんにも秀一と同じように友達でいたい事を伝えようと思っていた。だけど、それを伝えるような勇気が出なくて、立ち止まっていた
「俺と一緒に行くか?」
「秀一と?」
「安室くんと話す事は出来なくても、扉を開ける事ぐらいは出来る。決断はAくんに任せる」
秀一は本当にいつも背中を押してくれる
「お願いしても良い?」
「任せておけ」
「ありがと。今から行こう」
「良いのか?」
問い掛けて来る秀一に頷いて返し、立ち上がった
「では、行こうか」
「・・・うん」
同じく立ち上がった秀一に返事をしたが、足が一歩も動かなかった
「秀一?」
俺の手を握った秀一を見上げた
「引っ張ろうと思ってな」
「あ、ありがと・・・」
そう言うと秀一はフッと笑って、歩き出した。手を引かれながら、自分も歩いた。公園から喫茶店までは、ゆっくり歩いても近くて、すぐに着いてしまう
「準備は良いか?」
「う、うん・・・」
喫茶店の前で秀一に問い掛けられて、頷いて返事をした。秀一の手によって、喫茶店の扉が開いた。開いた瞬間、背中を押されて、店内に入った。後ろでは扉が閉まる音が聞こえた
「いらっしゃいませ!!」
「こ、こんにちは」
「こんにちは、Aくん。今日は何か飲みますか?」
「お、オレンジジュース」
いつものカウンター席に座って、いつものを頼んだ
「どうぞ」
「ありがと。それでさ、話があるんだけど・・・」
「・・・一旦、二人きりになりましょうか」
そう言った透くんに頷いて、オレンジジュースを飲んだ
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作者名:空白可能 | 作成日時:2019年10月14日 20時