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「俺、だって、警察官の、息子なんだからな・・・ッ」


少しぐらい抵抗してやる。少しぐらいコイツが捕まるような証拠を残してやる。今は手足を縛られている訳でも、相手が同級生だという訳でも無いんだから

苦しくなりながらも、人影、首を絞めて来る男の手に爪を立てた。ガリと確かな感触があり、男は手を放した


「ゴホ、ゲホ・・・ッ」


大きく息を吸いながら男を見る

突然、胸倉を片手で掴まれたかと思うと引き寄せられて、空いている方の手で顔を殴られる。口の中が切れて、鉄の味が広がる。そんな事もお構いなしに、何度も何度も殴られる

そして、胸倉を放されて地面に倒れ込む


「がは・・・ッ」


お腹に激しい痛みが走って、息が詰まった


「このやろ、」


意識も保てなくなっていたけれど、男の足に手を伸ばした。その手は男の靴を掴んだが、振り払われて、地面に落ちた手を何度も踏みつけられた

足で体を押され、仰向けに転がった

虚ろな目を男に向けた

男は俺の腕を切りつけた刃物を取り出していた。そして、それは全くの迷いも無く、俺の左肩に振り下ろされた

声にならない悲鳴が口から漏れた

一気に引き抜かれた刃物は、次に右足の太ももに刺さった

もう既に色々な感覚がマヒして、頭から何かがごっそり抜け落ちそうになっていた。視界も何も見えていなかった


「Aくん!!」


そんな声が聞こえて、忘れかけていた呼吸が吹き返して来た


「す、ばる、く・・・、」


声のした方に視線を向けても何も見えない

ドタバタと騒がしい音だけが聞こえ、助かったんだと安心したら、急な眠気が頭の中を支配する。意識は段々と遠退いて、騒がしい音も聞こえなくなった

それからどれだけの時間が経ったのか、俺は目を開けた


「Aくん・・・?」


頭を動かすと声を掛けられた


「だれ・・・?」
「私です。沖矢です」
「昴くん・・・?」
「今、お医者さんを呼んで来ますね」


そう言われたけど、ぼんやりとした頭で何も考える事が出来ない

あれからどうなったのだろう。頭を横に向けると見覚えのある茶髪が目に入る


「・・・哀ちゃん?」
「そうよ。貴方って本当にバカ」
「いきなりだね・・・」


起きて早々に哀ちゃんから心に突き刺さる言葉を吐かれた


「何が、大丈夫だから、よ。嘘も大概にして。どれだけ心配したと思ってるの?」
「哀ちゃん・・・」
「貴方までいなくなるかと思ったじゃない」


そう言った哀ちゃんの表情は確かな哀しみのようなものが見えていた


「・・・ごめん」


哀ちゃんに俺は謝る事しか出来なかった

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作者名:空白可能 | 作成日時:2019年10月14日 20時

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