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「バカね。私は貴方に守られたんだから、少しぐらい自信を持ちなさいよ」
哀ちゃんは俺の包帯の巻かれていない手を握って言った
「哀ちゃん・・・」
「何がしたいかは知らないけど、体を張るだけが守る事じゃないでしょ」
「・・・うん。ありがと」
なんとなく、哀ちゃんの言葉には説得力があって、受け入れる事が出来た。多分、お姉さんの話を聞いていたからだと思う
「男の子なんだから泣かないの」
「うん・・・」
哀ちゃんがハンカチで涙を拭ってくれた
「やっぱり哀ちゃんはお母さんみた、イタッ」
言葉の途中で哀ちゃんに頬をペチと叩かれた
「まだそんな年じゃない」
「じゃあ、お姉さんみたい」
「及第点ね」
お姉さんみたいだと言うが、年齢的には俺の方が上であって、お兄さんらしくしないといけない。それでも、哀ちゃんのはどこか自分よりも年が上のような気がして、ついつい甘えてしまう
「哀ちゃんは優しいなぁ」
「入院してる間だけね」
「うっそぉ」
「ほら、ご飯でも食べましょう」
「はーい」
ずっと点滴だけだったので、食事を取る事になった
「食べれますか?」
「う、うーん・・・」
昴くんに問い掛けられて、目の前に置かれた食事を見ながら考えた
左肩はなるべく動かしてはダメで、何度も踏まれた右手は複雑骨折をしているという話だ。残念ながら俺は左利きではない
「食べれない・・・」
「私、届かないわよ」
「だよね。昴くん、お願いしても良い?」
「勿論」
隣に座った昴くんがお皿を持って食べさせてくれる。それをゆっくり食べて行き、食べ終えた頃に病室の扉が開いた
「あ、透くん」
扉を開けていたのは、透くんだった
「起きていましたか。良かった」
「うん。透くんは、何だか疲れてる?」
いつもとは違い、疲れたような笑みを浮かべている透くんに訊いた
「少しだけ。では僕は用事があるので、これで」
「あ、うん。またね」
軽く頭を下げた透くんはすぐに帰って行ってしまった。その後、母さんが病室にやって来て、昴くんと哀ちゃんも帰って行った
「ほんっとにもぉ・・・。Aってば、無茶ばかりするんだから」
「ごめん、母さん。でも後悔は無いし、間違ってるとも思ってないよ」
「母さんもそれは思うけどね。ただ、」
「ただ?」
先を促すと母さんは首を横に振った
「今は怪我を治す事にしましょ」
「分かった。そうだ、母さん。俺はもう警察官にはなれない、よね」
「・・・なんだ。聞いてたのね」
頷いて返し、哀ちゃんとの事を話した
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作者名:空白可能 | 作成日時:2019年10月14日 20時