6 ページ6
｢寒くない？｣
布団の中で一緒に掛け布団にくるまっていると、Aが心配そうに訊いて来る。寝る時に着る服がなかったから、Aを埃を叩いたスカーフにくるんでいるだけで、俺は下着以外は着ていなかった
｢俺は大丈夫だよ。Aは？｣
｢お湯みたいに温かい!!｣
先程、覚えた言葉を使いたい年頃なのか、お湯に例えていた。この様子を見る限り、知らない事を知る事を楽しめているように感じた
｢Aはさ、色んな事を知りたい？｣
｢知りたい。いっぱい勉強して、ママとパパを、ビックリさせたいな!!｣
｢良い子だな。俺も手伝うよ｣
あまりにも無邪気に言うものだから、俺からは何も言えなかった。Aの望む事をしよう。出来るだけの範囲だけれど、幸せになってほしかった
たった一日での出会いと関係でも、そう思って願ってしまった
｢さ、もう寝ような｣
｢うん｣
｢寝る時は、おやすみなさいって言うんだ｣
｢おやすみ、なさい｣
｢おやすみ。ゆっくり眠れよ｣
目を閉じたAを抱き締めて、子どもの体温を肌で感じながら眠りについた。慌ただしい日を終わらせて、次の日、隣で眠るAを見て夢ではない事を確認する
親指をくわえて眠る幼い寝顔に触れる
｢んぅ･･･｣
｢可愛いな｣
幼い子どもは、意味もなく可愛く感じる
この子を守る為にも、俺は頑張らないといけない。それでも、この子の為になら、頑張っていけそうな気がした
｢良いか？家から出ちゃダメだぞ｣
これからの準備を整える用事で外に出掛けるので、玄関で見送るAに言い聞かせた
｢うん･･･、帰って来る？｣
｢ああ、帰って来るよ。約束しような。小指出してみ｣
自分が先に小指を出すと、Aも小指を出した。その小さな小指に、差し出した小指を絡ませた
｢指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます。指切った｣
約束の定番を歌って、約束を交わす
｢なに、これ？｣
｢約束の仕方だよ。約束を破ったら、針をいっぱい飲ませるっていう｣
｢こわい･･･｣
｢そうだろ？だから、約束を守るんだ。約束を破ったら許さないぞってな。大人しく待っとけよ｣
Aと約束を交わして、外に出掛けた。適当な場所で今後に必要なものを買い揃えて、早々にAの待つ住居へと帰った
｢ただいまぁ、おっとっと｣
玄関のドアを開けて、声を掛けると、小さな衝撃がぶつかって来る。それを受け止めて、視線を落とす。そこには小さい頭があって、グリグリと俺の体に押し付けていた
｢寂しかった？｣
｢うん･･･｣
素直な返事に何も言えなくなった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 45人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：空白可能
| 作成日時：2023年10月30日 23時
