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｢兄は、兄は生きてるんですよね!!?｣
手術中のランプが消えて、出て来た医者に彼が飛び掛かる勢いで近付き問い掛けた
｢手は尽くしましたが、今はなんとも、ですね。峠を越えられなければ･･･。彼の生命力に賭けるしかありません｣
｢そん、な･･･｣
崩れ落ちる彼に頭を下げて、医者は通り過ぎて行った。静かな廊下に、彼の嗚咽だけが響き渡っていた
彼の兄は病室に移されて、機械音だけが響く。嗚咽を吐いていた彼は、既に葬式を迎えているような顔にまで落ち込んでいた
｢･･･みんな、僕の傍から、いなくなるんだ｣
｢そうだな｣
｢僕が、悪いのかな･･･、僕が、生きてるから、みんな、死んじゃうのかなぁ･･･？｣
震えた声で、彼は僕に問い掛けた
｢それはない｣
｢何で、何で君に分かるのさ!!僕は死神なんだよ!!僕のせいで、みんな、みんな･･･っ｣
吐き出すように叫ぶ彼に、僕はなんと声を掛けたら良いのだろう
僕が傍にいる？それで足りるのか？僕が一人いるだけで、彼は満たされる？
答えのない疑問ばかりが頭を巡って、一向に言葉が声にならなかった
｢･･･ぉ、い･･･｣
どうするか迷っていた時、彼でもなく、僕の声でもない声が聞こえた
｢お、お兄ちゃん!!目が、覚めたの!!?｣
｢あた、りまえだ･･･｣
小さい声ながらも、彼の兄は返事をする
｢良かった、良かったぁ･･･っ｣
｢おれは、しなねぇ、って･･･、お前を、一人にしない、｣
｢お兄ちゃ、ん･･･｣
ベッドに近寄った彼の頭に大きな手が乗せられて、ゆっくりと撫でられていた
｢でけぇ、声、出すんじゃ、ねぇぞ･･･｣
｢うん、ごめんね。おやすみなさい｣
数分の間もない目覚めだったが、彼を安心されるには十分な時間だった。彼は兄の手を握り締めて、愛おしいそうに頬に当てていた
｢･･･良かったな｣
｢うん、良かった･･･。零くん、ごめんね。さっきは怒鳴ったりして。零くんに怒鳴っても、仕方ない事なのに｣
｢いや、お前の気が紛れるのなら、どんな事でも受け止めるよ｣
それで、Aが生きてくれるなら、僕は何でも構わない。出会った頃から、彼は心の弱い人だったから、それぐらいは覚悟の上だ
そう、出会った頃から
でも、その出会った彼は、もう既に彼ではなかった
そこまで考えて、思い出した事があった。数ヶ月の間、いや、十数年の間、彼の代わりに僕達と過ごしていた人の事を思い出した
それが今、目の前で眠っている、この人、Aの兄だった。それを思い出すと雪崩のように記憶押し寄せて来た
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作者名：空白可能
| 作成日時：2023年3月27日 23時
