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｢何をするんですか？｣
｢随分昔に貰ったんだ。願い事を一つ叶えるものだって。でも、俺は神様なんてものに願うより、自分で叶えた方が早いって思った｣
僕の質問には答えず、彼は手の平に乗せたピアスを見つめながら話した。確かに非科学的な神様の存在を崇拝するよりも、自分で叶えられる方が早いし、確実性が増す
｢ほんと、世界って意味分からない事が多いよな｣
｢僕は貴方がよく分かりませんが｣
｢そうか？｣
｢ええ。貴方には未来が見えているようにも感じたので｣
｢俺に未来が見えてたら、兄貴が死ななかったよ｣
もっともな意見を言われて、言い返す言葉を探した
｢ま、もう関係ないか。兄貴によろしく｣
そう言い、彼はピアスの飾りであった黄色の宝石を握り潰した。その瞬間、僕の意識は遠退いて、意識を失った
｢零くん？｣
思いの外、近くで聞こえた声にハッと我に返る
｢あ、えーっと、｣
｢大丈夫？難しい顔してたけど｣
隣にいた彼が問い掛ける
｢問題ない。ただ、仕事が上手く回らなくてさ｣
｢透くんが？珍しいね｣
｢とは言っても、妙な事件が起きて、その後始末だよ｣
｢そっか。倒れない程度に頑張ってね｣
そう言って、彼は微笑んだ
微笑んだ彼の首に目を向ける。首元の緩い服を好む彼は、珍しくハイネックの服を着ていた。それに違和感を覚えつつも、耳に目を向ける
｢あれ、ピアスしてなかったか？｣
｢ピアス？僕はしてないよ｣
｢そう、だったか･･･｣
｢もう、誰と間違えてるの？｣
片頬を膨らませた彼が問い掛ける
｢いや、誰だろうな。なんだか、お前がつけてたように思えて｣
｢何でだろ？｣
｢分からない。弟とかいたっけ？｣
そう言うと彼は暗い顔をした
｢A？｣
｢･･･いたよ。弟じゃなくて、兄だけどね。小さい頃に両親が離婚して、バラバラになったんだ。とは言っても、全く俺とは似てないけど｣
声を掛ければ、ポツリと返してくれた
長らく一緒にいたけれど、Aの兄の話は聞いた事がなかった。兄とは今でも連絡を取り合っていて、曜日を決めて会っているという。それが、Aの日と決めた日だそうだ
｢僕も会ったりは出来るか？｣
｢･･･嫌かもしれない｣
｢どうして？｣
｢お兄ちゃんの事、透くんが好きになっちゃうから･･･｣
彼は自分に自信がない。だからこその事だったのだろう。そして、僕はそんな彼の事が好きなんだ
｢大丈夫だよ。僕はお前を一人にしない｣
｢･･･本当？｣
｢勿論。だから、会わせてもらえないか？｣
頼み込んでみると、彼は渋々ながらに頷いてくれた
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作者名：空白可能
| 作成日時：2023年3月27日 23時
