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｢まだ生きてた兄貴を抱き起こして、声を掛けた。そしたら、目を開けてくれてさ、俺を見て笑ってんの。死にかけてるくせに｣
鼻で笑いながら言った彼の声は震えていた
｢兄貴はこのまま殺してほしいって言ったんだ。･･･俺は、兄貴を見殺した。息を引き取る間際に、キスしたんだ。アイツがいなくなる事が嫌で、ずっと一緒にいたくて、兄貴の魂が俺の中に入ってほしくて｣
非科学的な事を話しているが、きっと彼は本気でそれを思っていたのだろう。亡くなった人の魂が抜け出しても、口付けた事で、抜け出した魂が自分に移ったのだと思っていた
｢それから、俺は兄貴を演じる事にしたんだ｣
彼はお兄さんを一人で火葬して、少し前まで遺骨を肌身離さず持っていたそうだ
｢それは今どこに？｣
｢お前に渡した｣
｢僕に、ですか？｣
身に覚えのない返事に更に質問をする
｢そう、お前に｣
｢いつの話ですか？｣
｢まさか、景光から何も受け取ってないのか？｣
｢それらしいものは何も･･･｣
答えると彼は何かを考え始めた
｢俺の遺品は景光が持ってる。兄貴の遺骨もそこだ。今すぐ取って来い｣
｢･･･逃げませんよね？｣
｢逃げない。さっさと行け｣
お兄さんの遺骨がそれほどまでに大切なのか、怒ったように言われて席を立つ。そして、彼に言われたように、ヒロのもとに向かった
｢遺品？｣
｢ああ。受け取るように言われた｣
｢分かった。ちょっと待ってろ｣
ヒロはあの会社に自宅を持っているので、そこまで赴き、
そこに遺品がまとめられているという話で、かなり量が少なかった。それを持って、自分の自宅に戻った
｢戻りました｣
いないかもしれないとも思ったが、ただの杞憂だった。彼はちゃんと家にいて、僕の帰りを待っていた
｢ヒロから受け取ったのはこれだけです｣
｢その中にあるはず｣
｢見てみます｣
テーブルに置いた段ボールを開けて、彼の求めているものを探した。しかし、それらしいものは見当たらない
｢これだ｣
同じように見ていた彼が群青色の小さな箱を手に取った
｢それですか？｣
｢そうだよ。ほら｣
箱が開けられ、中から顔を出したのは、予想通りのものだった
ダイヤモンドのついた指輪だ
｢ほら、お前のだよ｣
指輪を取り出した彼は、僕の前にそれを差し出した
｢これが、僕のなんですか？それに、遺骨って･･･｣
｢兄貴の遺骨で作ったダイヤだよ｣
手の平を出すとその上に指輪が落ちた
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作者名：空白可能
| 作成日時：2023年3月27日 23時
