何食わぬ顔で咲く黒百合。【男主】 (ページ5)

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それが毛利探偵事務所であり、今後のキーパーソンとなる江戸川コナンくんと安室透での初対面となった

｢安室さん、誰かにメールですか？｣
｢ええ、少し｣

僕がポアロに入って数日、スタッフルームで入れ替わりの為に入って来た梓さんに返事をする

｢へぇ、恋人さんとか？｣
｢あー、ちょっと違いますね。同居している友人です｣
｢なるほど｣

梓さんに答えて、自分は入れ替わりに表に出る

お客はまだ少なく、カウンター席の端に一人の男性客が座っていた。その客は、表情をコロコロと変えて、携帯とにらめっこをしていた

別に知らない訳ではない。あの男性客が、ここの常連である事も、FBIに協力している一般人であるという事も、僕は知っている

名前を望仙(もうせん) 明光(あけみつ)と言い、それ以上の情報はなかった。いや、めぼしい情報がなかったと言うべきか。まぁ警察の関係者ではない、ただの一般人であるから、限られた情報しか与えられないのだろう

｢あ、すみませーん｣
｢はい、ただいま｣

にらめっこしていた顔を上げて、男性が声を掛けて来たので、それに応対する

｢ブラックのコーヒーと、このケーキお願いします｣
｢かしこまりました｣

注文を受けて、ブラックのコーヒーとケーキを作る。出来上がったものを男性の前に出した

｢お待たせしました｣
｢ありがとうございます。えーっと、安室さんでしたっけ？｣
｢ええ。貴方は常連さんだと店長と梓さんに聞きましたよ｣
｢そうなんですよ。これから、よろしくお願いします｣
｢こちらこそ｣

何をよろしくするのか分からないが、こちらが何者かは悟られないようにした方が良いだろう。ただの一般人と言えど、腐ってもFBIが頼る相手だ。何かしらの由縁はあるはずだ

｢そう言えば、お客さん、お仕事は何を？この時間はまだお昼には早いですし｣
｢仕事はしてないですね。前まで南洋大学にいたんですが、今は東都大学工学部で学生やってます｣

当たり障りのない事を訊いて、情報共有という名目で自分の知っている情報と辻褄を合わせて行く

大学を変えているのは珍しい。そこまで思って、Aも大学に入ってすぐ中退していた事を思い出した。その後に就職をしたようで、僕達よりも先に働き始めていた

それこそ、僕達が大学生の頃に奢ってもらったりしていた。彼がアイツに食材を買い与えて、お弁当や朝昼晩の食事を出してもらっている事も多かった

つまり、お互いに都合が良かった。警察になる前も、色々と助けてもらっていた

今となっては、その面影もないAだけれど