39 ページ39
彼の事は、本当に無理はさせてしまったのだから、暫くは寝かせておこうと思った
嘔吐するぐらいには、無理はさせた
布団からはみ出ている彼の手に視線を向ける。一応ながら手錠は背中の方ではなく、前で掛けて。その手首は行為の影響で紫色になっていた
彼が次に目覚めたのは、数時間が経った後だった
｢ぅう･･･？｣
｢おはようございます。･･･まだ寝ますか？｣
僕が声を掛けた瞬間に布団に隠れた彼に訊く
｢ごはん｣
｢用意出来てますよ｣
｢うぅ･･･｣
｢起きれそうですか？手伝いますよ｣
布団から出ようとしている彼の体を支えて、体を起こした
｢おはようございます｣
｢･･･おはよ｣
挨拶に返事が返って来るとは思わなかった。それが嬉しくて、キスをしようとすれば、手の平で顔を押されて、彼からの拒絶を意思を受ける
｢立つのが辛いのであれば、運びますよ｣
｢運べ｣
｢分かりました｣
可愛い命令に従い、彼の事を抱き上げる。抱き上げた彼は大人しく運ばれて、ダイニングの椅子に座らせる事が出来た
｢準備しますね｣
｢手錠外せ｣
離れようとすれば、怒ったような口調で言われる
｢逃げるでしょう？｣
｢俺はいつでも逃げれんだよ。邪魔なんだよ｣
｢キスしてくれたら良いですよ｣
｢お前がしろっつーの｣
｢それじゃあ、お言葉に甘えて｣
座っている彼に口付ける。彼は抵抗せずに受け入れた。唇を離すと無表情な彼と目が合った
｢どうぞ、手錠の鍵です。自分で開けられますか？｣
｢指つるからやって｣
｢分かりました｣
両手を出した彼の手首につく手錠の鍵を外した
｢紫色になってるし･･･｣
｢すみません。それにしても、それが貴方の素の姿なんですか？｣
｢そうなんじゃない？今となっちゃ、俺も俺自身のほとんどが分からない。お前も聞いただろ。俺が意識もほとんどないのに、色んな声になってたの｣
｢そうですね｣
どうやら、行為中に様々な声が出ていたのは意識していた事ではなくて、無意識の中で声がこぼれ落ちていた
長い間、別の人格を演じていたというのは、多少ながらに彼の人柄を蝕んでいたらしい
それもそうか。彼は僕と出会った頃から、
｢メシ｣
｢ただいま｣
彼に催促されて、用意していた食事をテーブルに並べる。胃の中のものがなくなっていると思って、沢山の食事を用意した
｢全て食べて良いですよ｣
｢またゲボ吐くじゃん｣
｢流石に今日はしませんよ｣
どうせ、と言いたげな彼に言葉を返す
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 32人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：空白可能
| 作成日時：2023年3月27日 23時
