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｢･･･良いぜ。会わせてやるよ｣
｢本当ですか？｣
｢ああ｣
｢ありがとうございます｣
Aに会えるのだから
｢まずは、どこを目指しますか？｣
手錠をかけたままの壱望 明光を車に乗せて、自分も乗り込んで問い掛けた
｢そうだな。ここが、ここだとすると･･･。あそこは、かなり離れた山奥だな｣
｢分かりました｣
指示に従いながら、言われた通りのかなり離れた山奥を目指した。片道二時間程かかった場所には、そこには廃墟になっているであろう建物があった
｢ここに彼が･･･？｣
｢いる。見ての通りの廃墟だが、中に墓地がある。入るぞ｣
｢は、はい｣
壱望 明光は廃墟となった建物に入って行き、自分も後ろをついて歩いた
暫く歩いて行くと拓けた場所に着いた
そこは手入れは行き届いていて綺麗ではあるものの薄暗く、とても静かな場所だった
｢ここにいるんですか？｣
｢そう｣
そう言われ、拓けた場所の中央に歩いた。辺りを見渡して、それらしいものを探した
｢ここのどこに？｣
先程から動かない壱望 明光を振り返って訊いた
｢目の前にいるだろ？｣
｢はい？目の前に？｣
自分の目の前、と言われてもう一度向き直った
｢目の前というのは、｣
｢お前の目に、今誰が映ってる？｣
｢そんなもの、壱望さんしか･･･｣
そこまで言って、何かが頭によぎった
｢ま、さか･･･っ｣
｢そう。
｢う、嘘だ!!そんな事、信じられるわけ、｣
｢あるんだよ｣
僕の声を遮って壱望 明光の口から吐き出された声。それは自分が愛した声に物凄く似ていた
｢僕の声、もう忘れたの？零くん｣
全く違う名前で、顔で、性格で、僕の知っている彼とは真逆の存在が、僕の愛した人だなんて思いたくはなかった
だけど、声はAそのものだった
｢あの、映像の中の、Aは･･･｣
｢あれは俺が百々日 Aの姿で死んだ芝居をしただけ。もう一人を変声機を使って、俺の代わりにしてな｣
壱望 明光の声で答えられる
｢じゃ、じゃあ、今までの、Aは、｣
｢全部、偽物だよ。お前と出会った時から、ずっと、ずっとな｣
そう告げられた時、Aが笑った顔や友人達が亡くなった時に泣いていた顔、何かに集中している横顔、色々な表情が思い出された
そして、その全てが作られたものであった事、それなりの生活を送れる程の特殊な技術をこの人は持っている
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作者名：空白可能
| 作成日時：2023年3月27日 23時
