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「ジンからの命令だ。
そう言って渡されたのは、拳銃だった
「何故?」
「自分の命か、他人の命かを天秤にかけさせるんだと。差し詰め、俺は見届け人だ」
「そう、ですか・・・」
淡々と告げられる望仙さんの処遇に、重圧がのし掛かる
「嫌なのか?」
「気分は良くないでしょう。彼はただの一般人で、」
「FBIに協力してる時点で、俺達の敵だ」
途中で遮られ、ここでの正論を述べられる
「ま、恨むのなら、お前の口の軽さを恨むんだな」
無表情で事実を突き付けられ、僕は壱望さんの差し出した銃を取るしかなかった。それに満足した
「・・・望仙さん、貴方の持つ情報を話せば、もう少し生きられますよ。もし、それが嫌なら、」
と、浅く息を吐く彼に告げ、先程、壱望さんから受け取った銃を地下室の牢屋の隙間から入れた
「それでは、僕はこれで」
後ろに控えていた壱望さんを横目に通り過ぎ、地下室を出た
壱望さんは、壱望 明光はあの状況でも笑っていた。目の前で起こっている事に対して、笑っていられる程の狂人なのだと認識を改めた
望仙さんに銃を渡した次の日、彼が自ら命を絶ったと連絡があった。胸に銃口を当てて、心臓を撃ち抜いたそうだ。ご丁寧にも亡くなった姿が画像として送られて来た
地下室の薄暗い牢屋。冷たいコンクリートの床に広がる赤色の染み。銃の握られた手。生気を感じない横たわった姿
返信をするのも、手が震えた
「・・・コナンくん、望仙さんは亡くなったよ」
「え、」
「ごめんね。FBIにも言っておいてくれるかな」
外で会ったコナンくんに亡くなった事を話し、FBIにも伝えるように言った
望仙さんが亡くなってから二週間程度が経った頃、Aが姿を消した。それに気が付いたのは、警察としての仕事を終わらせ、久しぶりに帰った翌日だった
帰る前までメールでのやり取りはしていたのに、自宅にはAの姿はなく、自宅に帰ってからというもの、メールの返事すらも返って来なくなっていた
嫌な予感が胸を刺した
FBIが何かしたとは考えにくい。だとしたら、考えられるのは一つだった
組織の連中、壱望 明光が何かをした。そうだとしても、証拠がない。問い詰めてもはぐらかされるか、煽られるだけだ
今は、少しでも早く組織を潰す手立てを模索しつつ、Aの居場所を突き止める事を目的に据え置くよう考えた
しかし、Aを見付けるよりも先に、組織を潰す事となった
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作者名:空白可能 | 作成日時:2023年3月27日 23時