20 ページ20
｢バーボン？｣
｢あ･･･、えと、何でしょう？｣
意識の外から声が聞こえて、今の状況を思い出した
｢何でしょうって事はないだろ。お前こそどうしたんだよ。勝手に自分の世界に入って｣
｢すみません。少しだけ奇妙な事がったので｣
｢あー、たまにあるよな。そんな偶然ある？っていうヤツ。俺と恋人が出逢ったのも、稀に見る偶然だろうし｣
真逆の存在である彼とその恋人は普通なら出逢うはずはなかった。しかしながら、何の類稀なる偶然で出逢ってしまった
そんな彼の恋人が、これからどうなるのかは、あまり考えたくはなかった
犯罪者の寵愛を受ける代償は一体何なのだろう
｢そういや、上の奴らがなんかするみたいだけど、バーボン知ってる？｣
｢上の奴ら？｣
｢コードネーム持ってる奴らだよ｣
コードネーム持っている奴ら、と聞いて少し考える
｢恐らく、シェリーが見つかった事ですかね。僕もシェリーの確保、または抹殺に動くので｣
思い当たった節を彼に伝える
｢シェリー、ね｣
｢ご存知ですか？｣
｢いや、会った事はない。頭が良いって聞いただけ｣
そう言うものの、
｢えーっと、どうかしましたか？｣
｢別に？順調に進むと良いな｣
｢ええ、そうですね｣
シェリー、宮野 志保を保護する為に、今回は自分も作戦に参加した。忙しくなって帰れなくなる事も、帰れる日には連絡を入れるとAに伝えている
しかし、物事は上手く進まないもので、宮野 志保の確保には至らず、自分自身にも突っかかりが出来た
｢透くん？大丈夫？｣
ボーッとしていると、不意に聞こえた声と自分の手の甲に感じる温かい感触。我に返って、手元を見れば自分の手に、声を掛けてくれた彼の手が重なっていた
｢A･･･｣
隣にいるAの顔を見て、今、自分が自宅にいる事を思い出した
｢大丈夫？嫌な事でもあった？｣
｢･･･ううん、ないよ。心配かけて、ごめん｣
｢俺はいつも心配してるよ。透くんが無事に帰って来てくれるかなって｣
謝ると偽る事のない言葉が返って来た。それは僕を引き留めるような言葉で、今後も彼のもとに帰って来る事を約束させるものだった
｢いつも心配してくれて、ありがとう｣
｢そう言ってくれると、嬉しいな。重たくて、ごめんね｣
｢僕も嬉しいよ。Aがいるから、僕は生きていられる｣
Aと一緒にいられる場所が、僕の心の拠り所になっていた
共依存、というのはこういう事を言うのだろう
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 32人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：空白可能
| 作成日時：2023年3月27日 23時
