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｢ジンとは今も？｣
｢まぁな。恋人には手出し出来ないし、溜まる一方なんだよ｣
行為は相手の親が決めた日にする事になっていて、それ以外では何も許してもらえない。デートをするのにも親が同伴しているという話だ
｢よく、そんな方とお付き合い出来ますね｣
｢好きだからね。純真無垢で、清廉潔白な女の子でね。黒く汚れた俺とは真逆な存在だ。そんな彼女に惹かれたんだ｣
｢･･･なるほど｣
暗い存在が明るい何かを求めるのは、そう難しい話ではなかった。箱入り娘という事はかなりの純白さを持っているだろう
黒を基調とするこの組織とは真逆な存在。だからこそ、彼は強く惹かれた
誰かを好きになる理由なんて、簡単なものだ
そんなものだ
｢バーボンは恋人のどこに惹かれた？｣
｢･･･教えません｣
｢ケチ｣
｢もう･･･。僕は、優しいところに惹かれただけです｣
｢分かる!!優しい人って、素敵だよなぁ｣
ひどく曖昧な答えを言ったのに、壱望さんは何故か賛同してくれた。純真無垢な恋人は、優しい人だと相場は決まっている
｢恋人と、もう少しで初夜なんだよねぇ｣
｢デリカシーのない人ですね｣
｢そう？嬉しくてさ。･･･俺が彼女を汚す事を想像したらさ、堪らなく興奮する｣
｢はぁ･･･。あまり求め過ぎると嫌がられますよ｣
｢そうかも。気を付ける｣
下世話な話を続ける壱望さんに釘を刺せば、笑って返された
｢話聞いてくれて、サンキュ。また聞いてくれよ｣
｢嫌ですけど｣
｢そう言わずに。じゃ、またな｣
彼は去って行き、一人溜め息を吐いた
｢壱望さんって、名前はなんなんですか？｣
数日が経ったある日、飽きもせず話し掛けに来た壱望さんに問い掛けた
｢何で？｣
｢いえ、ふと疑問に思ったので｣
特に理由はなかった。訊いて返答があれば良い方だという認識で訊いただけだった
｢バーボンは？｣
｢僕は安室 透ですよ｣
｢ふーん｣
｢貴方は？｣
｢壱望
告げられた名前に驚いた
それにしても、最近、同じ名前を持つ人が多い気がする。壱望さん達もそうだが、Aも同じ名前を持っている人がいた
偶然は重なるものだ
偶然は重なり、いつしか必然となり、運命になる。それは抗えないものだったりもする
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作者名：空白可能
| 作成日時：2023年3月27日 23時
